THANKS FOR CLAP!
歌舞伎町に珍しく雪が降り積ったのは異常気象や悪質な事件がニュースを飾った日で、大人たちの溢す独自の解説を余所に、雪はあっという間に子供たちの玩具と化した。
もちろん、歌舞伎町の女王と自負する神楽とて例に漏れず、愛犬の定春のような色をした雪をよっちゃんたちにぶつけては不平不満の声を浴び、そのたびに神楽は胸を張ってふんぞり返った。
地球人の、それも子供相手に本気で投げるなど勿論ないというのに。
それでも、昼前には繰り出したせいか雪遊びは帰る頃にはすっかり身体を疲労させ、 今日のニュースも、それに対して銀時や新八が良い顔をしてなかったことだって頭から抜けて、子供たちにじゃぁねと手を振って家路に着く時分にはどうでもいいことと化していた。
そう、どうでも良かった。
いつもより早い歩調の後ろを一定の間隔を開けて付いてくる足音が無ければ、もしかしたら頭の隅くらいには思い浮かべただろうと思うほどには。
嫌でも聞き慣れたことが少し癪で、今は特に思い浮かべることも無いから耳にやけに響いているだけで、断じて聞き入れたいわけじゃない。
大事なことなのでもう一度くらい言っておきたい。
だから、
「付いてくんなよ、ストーカー!」
「失礼な、ストーカーは近藤さんだけで十分でさァ。黙って優しいおまわりさんに後をつけられてな、チャイナコノヤロー」
「言ってることがヘンタイなんだヨ!」
あぁもう、ウザったいことこの上ない。
警察呼ぶぞ、と言う前に後ろを付けてるヤツこそが警察だと思い出した。
(いつもと違って私服なんて紛らわしい)
世も末だ。
上司にストーカーを持つ一警察も、その上司の部下である彼にストーカーされる私も。
ストーカーではなく護衛だと後ろの彼は言うが、なら尚更それをされる意味を図りかねる。
一体、何の真似だというのだ?
振り切ろうにも、遊び疲れた身体にそれは酷で、しかしこれ以上ヤツと言葉を交わすのも面倒で。
そうこう思案している内に万事屋銀ちゃんの看板が見えてきた。
微かに鼻腔をくすぐる匂いについ頬が緩みそうになる。
今日の夕飯はなんだろう?
カンカンカンと、居候先に続く赤い階段を上る。
きっと、夕飯を食べてる途中にはストーカーされたことなんて忘れて、遊びつかれた身体は睡眠を求め、素直な私はそれに従うだろう。
この時期、最も重宝される愛玩ペットに包まれて寝るのは至高の幸せだ。
その幸せを得るのはあと少し。
がたつき始めた引き戸はもう目の前に。
しかし、扉に手をかける寸前にヤツに、沖田にその反対の手を掴まれた。
どうして、だ。
こういう時に限って、驚愕のせいか脳は言葉を口に伝えてはくれない。
目の前には意地の悪い笑みを浮かべた野郎が居る。
「優しいおまわりさんがせっかく護衛をしたってのに、歌舞伎町の女王は何のお礼もしてくれねーんですかィ?」
握られたその手が、熱いと、頭の片隅でなんとか思った。
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ずーっと温めていた沖神のお話に手をつけました。
もう1回拍手して頂けると2話に飛びます。