不二姉弟の日常
「それでね、今日お昼に……」
にこにこと微笑みながら、周助は今日あったことを身振り手振りも交えて楽しそうに話す。帰宅してすぐに始まる双子同士のそのおしゃべりには、母が淹れてくれる美味しい紅茶が必須だ。
綺麗な水色を湛える暖かなティーカップを傾けながら聞く周助の話はいつも穏やかで楽しげなものが中心で、今日の話も実にほのぼのとしたものだった。微笑みを絶やすことのない周助に、自然と私の口角も上がる。
「周、もうすっかり平気になったね」
「うん?何が?」
「私とちがうクラスでも、ってはなし」
たのしそうで良かった、と微笑みかけると、周助も同じようににこりと笑う。
「うん、たのしいよ、がっこう。……それにね、奏」
「ん?」
「会えないじかんは、あいをそだてるものなんだって」
「は……?」
奏はきいたことある?なんて変わらず微笑み続ける周助に、思わずぽかんと口を開けたままの間抜けな顔を晒してしまう。え、何言ってるの?この子。
「えっーと……周助?そんなこと、どこで……」
「えっと、何かのうただったよ。だれがうたってたのかまでは分からないけど、そうかんがえるとすごくすてきだなって思って」
会ーえーなーいー時間がーあーいーそーだーてるのさー♪
周助の返答を聞いた瞬間、即座に頭の中で覚えのあるフレーズが再生された。一瞬何でちみっこがそんな古い曲を、と思ったが、そういえば最近その曲を使ったCMが流れていたのを見た気がしなくもない。もしかしなくても、周助はあれを見たんだろうか。
周助が突然そんなことを言い出した理由が分かっても、まだちょっとぽかんとしてしまう。偶然そんな曲を聴いたとしても、普通はそれを自分と家族に、それも家族の中で最も時間を共有している双子の姉に当て嵌めて考えるとは。本当に凄いことを言い出す子だ。
「もっとそだつと良いよね、あい」
可愛らしく両手でティーカップを持ちながらにこっと笑う周助に、思わずちょっと乾いた笑いが零れた午後の出来事。
Afterword
弟はお姉ちゃんが大好きです!というお話。無論親愛ではありますが。
お姉ちゃんは弟の愛がそこまでのものだという認識が浅いので、これからも度々弟の行動にびっくりすることがありそうです。でもそれも幸せのひとつということで。
お姉ちゃんは弟の愛がそこまでのものだという認識が浅いので、これからも度々弟の行動にびっくりすることがありそうです。でもそれも幸せのひとつということで。