基本の挨拶で10のお題 まずは1のお題。 ふわりと欠伸をひとつして、なのははベットから身を起こした。 時は早朝。何故こんなに早く起きるのかというと、フォワード達の早朝訓練があるからだ。 うーんと背筋を伸ばして、なのははその蒼空をついと左横に滑らせた。 そこに居るのはすやすやと夢の中にいる恋人と愛娘である。なのはは二人の可愛い寝顔に微笑みを浮かべた。 ベットを降りて、なのはは洗面所へと向かった。まだ少し残っている眠気を覚ますためである。いくら朝が早いとはいえフォワード達には寝ぼけた顔は見せられない。 バシャバシャと数回冷たい水で顔を洗って、なのははすっきりとした顔をする。そして寝巻きのパジャマからいつもの白い教導服へと着替えるべく衣装棚へと向かった。ささっと手早く着替えて次は鏡台へ。まぁ、一応のTPOとして軽い化粧をする。最後に鏡で身だしなみをチェックし、なのはは満足げに頷いた。準備完了である。 それからなのはは今だ健やかな寝息をたてている二人の元へと向かった。 まずは愛娘ヴィヴィオの寝顔をなのはは母親の笑顔で眺め、愛おしげにその頬を撫でる。つい一か月ほど前に死闘を繰り広げ、ようやくこの手に取り戻した大切な大切な宝物。この安心しきった寝顔を眺めているだけで、あの時頑張ってよかったなと改めて思う。横で眠っている恋人とはまた違った金髪の前髪を起こさないようそっと指先で退けて、なのははヴィヴィオの額に唇を落とした。最後にもう一度頬を撫でて「いってきます」と小さく囁く。 それから今度はなのはの恋人――フェイトへと挨拶をしようとヴィヴィオから視線を上げると、ふいにその紅と目が合ったのでなのはは静かに驚いた。 「フェイトちゃん…?」 「ん…なのは…」 眠たそうに瞼を擦るフェイトの傍へ寄り、しゃがみ込む。その顔を覗き込むとフェイトの片腕が求めるように伸ばされたので、なのははその手に己の指を絡めてきゅっと握った。 「ごめんね、起こしちゃったかな?」 「ううん、だいじょーぶ。早朝訓練だよね…?」 「うん、そう。今日は一緒に朝ご飯食べれるよね?」 「うん。今日は本局へ行く用事も無いから、一緒に食べれるよ」 「そっか」 久しぶりの一緒の朝食である。J.S事件の事後処理がようやく終わりに近づいたので、フェイトは久しぶりに六課に居る事が出来るのだった。 「訓練が終わるのはいつもの時間でしょ?ヴィヴィオと一緒に迎えに行くね」 「うん。ありがとう」 「気を付けてね」 「ん。分かった」 そう返し、先程ヴィヴィオにしたようにフェイトの額に唇を落とすなのは。フェイトはくすぐったそうにふにゃりと笑ってそれを受け入れた。 そっと離れてなのはも同じような笑みを浮かべて立ち上がった。だがなのはがそのまま訓練に行こうとすると、フェイトが思い出したように「あっ」っと声を上げてベットから身を起こすと離れかけていた手を再び掴み「なのは」と呼ぶ。 「何?」と不思議そうに振り返ったなのはにフェイトは「忘れ物、だよ」となのはをくいっと引き寄せその唇にキスをした。 軽くニ、三度角度を変えて触れ合わせて、離れる。 そして頬を赤く染めたなのはに、フェイトはふわりと微笑んで、こう告げた。 「おはよう、なのは。それから、いってらっしゃい」 その言葉になのはは目を丸くして。 それからその蒼空を柔らかく細めて、こう返したのだった。 「おはよう、フェイトちゃん。いってきます」 ☆―☆―☆ 「んー…」 「どうしたのよ?スバル」 「いや、何か今日のなのはさんご機嫌だなぁって思って」 「あ、わたしもそれ思ってました」 「何か良い事でもあったんですかね?」 「さあ?」 揃ってなのはに視線を向けるフォワード陣。レイジングハートと何か話をしながらモニターを見ているなのはの横顔は、確かに言われてみればいつもより数倍増しで明るい気もしなくない。が、まぁ、そんな事を気にしている暇があったらきちんと準備体操をしてこれからの訓練に備えた方がいいだろうと、四人はすぐに体操に戻った。いい加減、朝っぱらから泥だらけになるのは四人ともごめんなのである。 「よし」っとメニューの最終確認を終えたのか、なのははモニターを閉じて四人へと向き直った。 「さて。しっかり準備体操したかな?」 「「はい!」」「大丈夫です!」「ばっちりです!」 元気に返事をしたスバルにエリオ、力強く頷いたティアナ、両手をぐっと握ったキャロ――と視線を流していったなのはは四人の反応に満足そうに「うんっ」とひとつ頷き、 「それでは、今日も元気に、早朝訓練いってみようか!!!」 「「「「はい!!!」」」」 晴れ渡った蒼天に、五人の元気な声が響き渡った。 【おはよう。今日も元気にいってみよう!】 |
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