【 残響 】 薄桜鬼:沖田→斎藤

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「…離せ、総司」

そう言っても振り解こうとしない斎藤の肩に、沖田は額を押し付けた。

ほんの少しだけ乱れた髪の毛が風に弄ばれる感覚に混じる、僅かな血臭。

誰もいなくなった路地を吹く風は、これ見よがしに浅葱の羽織をはためかせた。



新選組の双璧と密かに囁かれる、沖田総司と斎藤一に出くわしてしまった愚かな者達は、己の不運を嘆く暇も無いまま骸と化した。

ふらりと出歩いていたのであれば未だしも、羽織を着用していた―巡察中の彼らに容赦などは無いに等しい。数多の命を狩ってきた鋼が、まるで喜びの悲鳴を上げる様に空気を鳴らし舞う姿を、狩られる側は何を思って聞いたのか。



「…総司」

咎める様な、それでいて甘やかす様な声で名を呼ばれて、沖田はゆっくりと目を閉じる。

そんな二人の間を駆け抜ける、荒んだ空気。

足元から昇る、絡みつく死の香り。

仄暗さを持った冷たい風を取って付けたかの様な理由にして、沖田は斎藤を抱く腕に力を込めた。温かな相手の体温に泣きたくなる。

沖田は込み上げて来た感情を、深い呼吸で無理矢理飲み込んだ。



「(ねえ、あと、どれくらいかな?)」

この手で君に触れられる時間は、あと―どれくらい残ってるんだろう?





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2010/05/18 皆川(沖田は段々と死と言うものについて考えていくと言うかそんな感じでorz)

終わりを知る恋に10のお題 >> 05:ねえ、あと、どれくらい残ってる?



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