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※現在のお礼SSは「イイコト、イケナイコト/一期一振×女審神者」です※

※全年齢の仲良しいちさにの話※














 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇







イイコト、イケナイコト



 真夜中。
 どこでもない場所にある本丸は暗く静かだ。
 その中でも、執務室周辺は特に静かだ。執務室の隣には審神者に与えられた私室がある。昼はともかく夜は人の気配がなくなってしまう。女性の居室は無闇矢鱈に侵すものではないよ、と雅を愛する我が初期刀が言っていたらしいと聞いたが、真偽を確かめたことはまだない。けれど、彼なら言いそうだなとも思う。
 普段はまったく感じないが、男士が過ごす生活棟から離れたここにいると、自分ひとりだけが取り残された気がしてくる。
 実際、わたしは『異物』だ。
 ヒトならざる存在ばかりの本丸で、唯一の人間。人間の姿で人間のように過ごしているが、彼らは『違う』。

 起きて、ぼんやりと執務室でたたずんでみる。
 周囲には人工の光はないが、今日は月が明るい。暗さに目が慣れると、いろんなものが見えてくる。いや、見えなくても構わないくらいの気分になってくる。審神者となって本丸で過ごすようになってもう片手では数えられない年月が経った。この闇に浸る夜の雰囲気は嫌いじゃない。指先から溶けていく感じがする。


 どれくらいそうしていただろう。
 静寂をとんっという音が破った。
 振り返ると我が近侍が立っていた。
 さっきの音は開いた障子の桟を叩いたものだろう。だいぶ遅い時間だが、これから寝る、もしくは目が覚めたような感じではない。
 付き合いが無駄に長いので、なんとなくわかるものは多い。
 さっきの初期刀による女性の居室云々だが、例外もいる。彼はその例外の筆頭と言ってもいいだろう。
「眠れないんですか?」
「というより目が覚めて。完全に冴えちゃってどうしようかなと思ってるところ」
「では主」
「んー?」
「私とイケナイコトしませんか?」
 一期一振は爽やかな笑顔で笑って言った。

 イケナイコト。
 そう言われて思い出すのは、どういうものだろうか。
 彼の場合は、艶事が1割未満、その他が残り全部といったところか。それにそういった『お誘い』の場合は、イイコトしませんかと投げかけてくる。ごく稀にそっちだったりする場合もあるので、言葉だけでは判断できないが、今日の場合は違う気がする。不思議とそういうときはわかる。そのときの状況以外にも、仕草や声のトーン、醸す空気。それらが複雑に絡まり合うので、判断基準を明確に言語化するのは非常に難しいので、なんとなく感じ取っての結果だ。
 ゆえに、念のため確かめる。
 これを怠るとたまに大事故に繋がるので、確認は大事だ。
 経験から学んだ。

「えー。なに?」
「なんでしょう。とりあえず着替えましょうか」
「デートのお誘いかな?」
「そう取ってもらって構いませんよ」
「へー。いいのかな。優等生の近侍さまが主と一緒に深夜に徘徊。しかも外」
「だから言ったではないですか。イケナイコトしませんか、と」
 爽やかな笑顔のまま、一期さんは言った。
 なるほど。
 理屈は納得。意図も納得。
 自分の憶測もだいたい当たっていたようだ。
「はーい。じゃあ、少し待ってて。着替える」
「そのまま寝ないでくださいね」
「さすがにないと思うよ」
 閉めてもらった障子越し、軽口を叩きながら着替える。
 深夜のデートの行き先は様々だ。
 近場では本丸内を散歩するだけだったり、万屋街にでかけたり。本丸の活動スタイルも多種多様なので、夕方からの店もあれば、コンビニもある。屋台もあったりして、結構楽しいものだ。
「はい。おまたせ」
「では。こちらへ」
 伸ばされた手を握り、イケナイコトに耽るべく、街へ出る。
 帰る頃には健やかな眠りが、背後から迫っているのを感じていた。



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