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※現在のお礼SSは「以心伝心/一期一振×女審神者」です※

※全年齢の仲良しいちさにの話※














 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇







イイコト、イケナイコト



「あるじさん?」
 会議で外出した帰り道。
 はたっと足を止めた背に乱藤四郎の声がかかる。
「どうしたの?」
「うん」
 審神者と視線を合わせた乱は、ああと声をあげた。
「ドーナツ」
「うん」
 色とりどり。
 そんな形容がよく似合う店だった。
 ショーウィンドウに並んだドーナツはチョコやクリームでどれも愛らしく飾られている。
 仕事柄、本丸にいる時間が多く、外出しても万屋に行くくらい。それこそ政府主催の会議でも無ければ出てこない街だ。
「あるじさん、ここのドーナツ好きなんだ?」
「学生時代よく食べてたよ。テストのあとのご褒美とか。色々理由つけてね」
「そうなんだ」
「そうなの」
「じゃあ、今日は『会議に出かけたご褒美』?」
「んんー……、でも」
「でも?」
「それなら万屋街のドーナツも捨てがたい」
「和菓子屋さんの?」
「そう」
「あれ、おいしいよね。ボクも好き」
 審神者の脳裏ではふたつのドーナツが戦っていた。
 乱が言う『和菓子屋さんのドーナツ』はとてもシンプルなドーナツだ。
 一方『学生時代の思い出のドーナツ』は、チョコやクリームをまとった華やかなもの。
 どっちも好きだ。
 好きだから迷う。
 せっかくだから皆で食べたい。おみやげにしたい。
 今の時間なら三時のおやつに間に合う。
 しばらく悩んで、審神者は目の前の店のドアを開けた。



「たーだいまー」
「お早いお戻りでしたね」
 執務室に顔を出すと、近侍の慇懃無礼な声が迎えた。
 しかし、いつものことだ。特に驚くようなことではない。それに恭しく傅いてほしい願望もない。
「珍しく早く終わった」
「そうですか」
「それでね」
 お土産がある、という言葉は途中で途切れた。
 自分の執務机の上に見覚えのある紙袋が置いてあったからだ。
 飾り気のない茶色の紙袋には万屋街の和菓子屋の屋号が入っている。しかし、これは特定の品を入れるときにだけ使われる。
 じいっと見ているのに気付いたのだろう。
 近侍──一期一振が、ああ、と言った。
「買い出しのついでに買ってきました。お好きでしょう?」
「好きだけど。えぇー……」
「不服そうな声をあげんでくだされ」
「不服じゃなくって」
 ずいっと手に持った箱を一期の目の前に突き出す。
「なんで? ドーナツ」
「理由は特にありませんが。お好きだったなと思っただけです」
「ほんとに?」
「疑り深いですな」
「だって」
 ちらりと後ろにいる乱を見れば『ボクじゃない』とでも言うように首を横に振った。
「乱がなにか」
「まあ、うん」
 これは、と思う。
 本当に偶然だったパターンのようだ。
 皆へのお土産を乱に託し、審神者はことのあらましを語った。
「そういうことでしたか。それで乱を」
「迷って買わなかったから、気を回して一報入れたのかなって」
「偶然ですよ」
「以心伝心ってやつかあ」
「そうかもしれませんね」


 その日の三時のおやつには、審神者が買ってきたドーナツが配られた。
 審神者の皿にはもうひとつ。
 和菓子屋のドーナツが並んでいた。
 



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