なぜか憎めないと思ってしまったのは、どうしてなんだろう。
石焼きいも
新撰組の隊士さんたちが会議をすると言うから、部屋に入ろうと思ったけれど、
源さんに焼き芋の火の番をして欲しいと頼まれ、ひとり、庭に居た。
新しい枯れ葉を持ってきては山に乗せ、形を整える。
まさか屯所で焼き芋をするとは想像できなくて小さく笑った。
来たときは怖い怖いと怯えていたけれど、段々と皆のことも分かってきて、
同姓が居ないとか、やはり自由に外へ出歩けないとか、不便なところは多々あるけど、
最初に比べれば過ごしやすくなったと思う。
でも、気を緩めることはできない。
あくまで自分は居候で、隊士でもなく、仲間でも……
「仲間でも、無いのだから……」
これから時を過ごしても、女である以上、本当の仲間になることはできないのだろう。
わかっていても寂しい気持ちは日ごとに強くなった。
「……何をしている?」
「だ――」
持っていた箒を握り締め、燃え続ける枯葉の山を見つめて俯いていた千鶴は、
聞きなれていない声に顔を上げた。
金色の髪、威厳ある立ち姿。
決して逢う事を、待ち望んでいた人ではない――同じ、鬼の風間千景。
この人に逢うと、認めたくない現実ばかりで嫌になる。
「何をしに来たんですか」
「――そう、身構えるな。 我が妻に逢いに来ただけだ」
「妻じゃありません!」
きつく拳を握って、声に険を持たせてみても、彼にはちっとも効いていないようだった。
「ふん、今日はヤツらは居らんのか、つまらんな。 お前が楽しませてくれるか?」
「か、帰ってください!!」
「……そう、身構えなくとも今日はお前をどうこうしようと思って来ていない」
必死に追い払おうとする千鶴に風間は退屈そうに嘆息して、千鶴を見下ろす。
「……これは、何をしているんだ」
つぶやきに似た、覇気のない声に気が抜ける。
気がつけば反射的に答えてしまっていた。
「焼き芋です」
「焼き芋か……暢気なものだ」
見下ろす視線には何も映っていなくて、背負う雰囲気も先程よりも緩んでいた。
もしかして本当に今日は何もしない……?
「あのっ、」
「暇だな……今日のところは帰るか……」
自分の声で聞こえていないのか、千鶴の声に反応せずに踵を返してしまう。
慌てて枯葉の山を探り、風間へと駆け寄る。
ばたばたとした物音に風間は振り返った。
「……なんのつもりだ」
「たくさん、あるから その、お裾分けです」
「……くっ、くくくっ……お前、馬鹿だろう」
「いっ、要らないならあげません」
「否、貰っておこう」
眉間に皺を寄せて、笑いを堪えながら、千鶴の手から芋を受け取る。
その瞬間の、風間が千鶴を見下ろす瞳は穏やかだった。
悪い人じゃ、ないかもしれない。
今度から、頭ごなしに否定するんじゃなくて少しは話を聞いてみてもいいんじゃないか――
そう、思った。
2009.10.17
対風間時のツンツン!でガード固い千鶴も好きです。