Thanks For Clap
何回名前で呼ばれたかな。
俊に江藤と呼ばれることがなくなると気が付いて、蘭世は今まで俊に名前で呼ばれた回数を思い返した。思い返せるあたりがその少なさを物語っている。
大事なときには名前で呼んでくれていたから呼べないわけではないのだろうが、多少の恥ずかしさは伴っているのだろうと俊の心中を想像した。──真壁くんだもんねえ。
不思議なのは、鈴世のことは平気で名前で呼べることだ。鈴世も蘭世も大した違いはないと思うのだか、俊にとってはそうではないらしい。きっとこれからも名前で呼ばれることは滅多にないのだろう。だが、
──トクベツだからなかなか呼べないってことでいいんだよね?
蘭世は内心ほくそ笑むと、「おい」だの「なあ」だのの呼びかけでも許してあげることにした。
2017/03/28
『名前』のボツエピソード的な。
『名前』のボツエピソード的な。