それは、テニス部に在籍しているクラスメイトの試合を観に行った時のことだ。
関東大会決勝、東京の青学との試合。試合会場はそう遠くもなかったし、友達がついてきて、とせがむから付き添いのような形で応援に赴いた。だが、初めて生で観たテニスの試合は迫力があって、息を詰めるような試合展開の連続で、気付けば手に汗握って観戦していた。
暇なら観に来いよ、まあ勝つけどな、と豪語していたクラスメイトの切原赤也は、残念ながら負けてしまった。相手選手と握手をしようとした彼は倒れこみ、先輩達にベンチに連れて行かれる。その後、副部長の真田先輩の試合が始まって。しばらくして起き上がった切原くんは、コートチェンジの時、何か真田先輩に話しかけていた。すぐに、たわけが、と叱られた切原くんは、しゅん、と項垂れベンチに腰かける。
その時だ。
今まで傍観するようにコートを観ていた仁王先輩が、切原くんに近寄っていったかと思うと、切原くんの肩を二度ほど慰めるように軽く叩いた。
……え。
仁王先輩はすぐに元の場所に戻り、無表情で試合を見つめる。私はそんな仁王先輩の横顔から目が離せなくなってしまった。
……やだ仁王先輩、優しい……。
さっきまで、入れ替わりとかどうなの、とか、さすが詐欺師、とか、半ば呆れたように見ていた筈なのに今、心臓の鼓動がばかみたいに速い。結局、試合そっちのけで仁王先輩を凝視めてしまって、最後まで目が逸らせなかった。
今なら分かる。あの時私は恋に落ちたんだと。
(みゅを観に行った時、こういうシーンがありましてね。客席で必死に堪えたけど、もだえ転がりそうでした……◇'12.9.15)
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