青黒



その手から繰り出されるシュートは、まるで魔法のようだと、初めて目の当たりにした時に脳裏にそんな言葉が浮かんだことを、今でも覚えている。
もちろん、シュートのためには手の動きの他に、上半身も下半身もタイミングが1つ狂えば精度は落ちる。その一瞬の狂いで、リングに嫌われる事なんて、あり得ないほど見てきた。
だが、青峰くんの場合は少し違う。
少しズレたタイミングも、すぐに体が修正し最後にその大きな手でシュートを決める。どんな体勢でも、どんなガードがあろうと、彼にとっては突破出来る可能性が残っていれば、シュートへのコースが導き出されるらしい。ぶっちゃけ羨ましい。僕はそんなシュートコース、見えた事はないから。

話が少し逸れた。そう、手だ。僕は彼の手が、とても好きだ。
ボールを手中で転がす手も、お箸を持つ手も、そっと重なる手も。特に最後のは、共に眠る時や一緒にソファに腰掛けている時、するすると伸びてきたその手に捕らわれる。
上機嫌の時は肩や手を、機嫌が悪いと太ももを、癒されたい時は頰に、彼の手が伸びてくる。それが無意識なのか、それとも意識的なのか聞く気もないが、わかりやすく機嫌が顔に出る青峰くんだから僕もされるがまま。彼の機嫌に左右されるのだが、僕にとってはどちらでもご褒美に近い。

「……なぁテツ。今の所どう思う?」
「えっ?」

テレビに映されてるのは、昨日青峰くんが出場した試合。眺めてはいたが、彼の手が僕の頰を撫でているので、それに集中していた。

「あっごめんなさい、見てなかったです」

正直に話すと、青峰くんは自分が気になったところをもう一度巻き戻し、説明してくれた。その最中、大きな手はするすると耳を撫で頭を抱え込まれるように包まれる。まるで、すっぽりと片手で収まるボールの気分だ。ボールはいつもこの手で包まれていると思えば、少しだけ嫉妬したが、ドリブルされたりリングに向かって乱暴に投げられることはないので、僕の勝利だ。だって僕はこの手に大切に大切にしてもらっているから。

「ん? なんだよテツ」

彼の胸に頭を預け、じっと顔を見つめていたのがバレたようで、ふっと笑みを浮かべながらなんでもないです、と視線をテレビに戻した。
何が何だか理解できてない彼の手が、僕の毛先を弄ぶのを感じながら、毛先に触れるのは不安な時なのかな、とまた新たな発見が出来て満足した。



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