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01. 何気なく目で追ってしまう （S.Y.K　悟浄＋玄奘）


「玄奘様、少し休憩にしませんか。街でいい豆茶を手に入れたのです」


　最後尾を真っ青な顔で歩く悟空を見かねてか、悟浄が進言をしたのが少し前。
あっという間に薪が集められ、火を熾し、慣れた手つきで茶器の準備がされていく。
戦闘になると剣を握り先陣を切るのを見ていたせいか、荒々しい印象があったが茶を準備する
その姿は意外にも洗練されている。
茶器を扱う所作の指先に至るまでが美しく見えて、玄奘は戸惑った。
そういえば食料の調達も調理も得意でしたね、そんなことをぼんやりと思いながらも、
玄奘は悟浄の一挙一動から目が離せないでいた。

「玄奘様？」
「は、はい！」

　跳ねるように背中を伸ばした玄奘を見た悟浄は不思議そうに首を傾げ、お茶が入りましたよ、と椀を渡される。
熱いのでお気をつけくださいね、気遣いの言葉も勿論忘れない。
ありがとうございます、受け取った椀からいい香りが漂い思わず頬が緩む。
いい物を手に入れた、と悟浄が喜ぶだけある。椀にふー、と息を吹き茶で喉を潤しながら、
無駄なく動く悟浄の動作を反芻してふと気付く。
…反芻できるくらいには私は動作を追い続けていた、ということですね。
悟浄に気付かれなかったから良かったものの、私はなんと熱視線を送っていたのか。
熱くなった顔を隠そうと椀に必死に息を吹く玄奘を見て次はもっと温い茶を入れよう！と悟浄が意気込むのはまた別の話。