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現在お礼文は倉南で年齢操作(倉間→大1南沢→大2)
超次元ねつ造です。
長々と4ページ分続いておりますが、良かったら読んでやってください!










南沢さんは転校した後、俺との連絡を一切絶った。
そして全国大会で試合をして、和解をしたような雰囲気になって、
俺はまた南沢さんとサッカーが出来る日が来るのを心待ちにしていた。

しかし、それからも一切連絡はとれなかった。

メールを送ればエラーメールが返ってくるわ、
電話を掛ければおかけになった電話番号は現在使われておりません、なんて冷たく(彼女にはそんな気はないのだろうけれど)切り捨てられるわで、
なんて薄情な奴なんだと俺は一時期本気で南沢さんを嫌いになろうとした。

まあそんなの無理だった訳で、俺のアドレスは中学二年から大学生になった今でも変わらない。
いつでも南沢さんからメールがきてもいいように、なんて淡い期待は5年の月日に踏みにじられたけれど、どうしても変えられなかった。
胸に抱いたままの、この青臭い感情がいつまでたっても変わることがなかったように。


「ねぇ典人、この鍵なぁに?」

銀色の鍵を見つめる大きな瞳を縁取る長いまつげは、南沢さんによく似ている。

「知らねぇ」

俺の冷たい返事に、頬を小さく膨らます。
女の子は可愛いと思う。俺だって、決して彼女が作れないわけじゃない。
中学の時はチビだなんだとバカにされたけれど、高校に入ってからは平均以上まで伸びた。
サッカーだってそれなりに強いし、FWという目立つポジションだ。
寄ってくる女の子は少なくなかった。

だけど、誰とつきあっても長くは続かない。
女の勘はさすがというかなんというか、
いつも私より大事な人がいるんでしょう?なんて言われて勝手に終わりにされる。

だから、深い関係を築くのはやめた。
今目の前にいる子も、別に付き合っている訳じゃない。
確か、初めてそういうコトをした時には、本命の彼氏がいたはずなのだけれど。

「典人ぉ、いつになったら彼女にしてくれるの?」

最近そんな事を言うようになったからそろそろ潮時だなと思っている。

「帰る、それ返して」

「いつも持ち歩いてるけど、大事なの?」

「まあ…、大事な人の忘れもの」

渋々と言った様子で鍵を手渡される。
南沢さんが、俺に残していった唯一のものだった。
転校する直前に、それやるよ、と手渡されたのだが何処の鍵かは教えてくれなかった。
今も分からないままだけれど、南沢さんの形見として財布に入れて持ち歩いている。

「…ねえ、ずっとこんな中途半端な関係…私やだよぉ」

甘ったるい声とちょこんと引っ張った服の裾で帰ろうとする俺を引き留める。
最初にこの関係が楽で良いと言ったのは確かこいつの方だったのに。

「…じゃあ、もう来ねえから」

「え?」

「今までありがとな」

「ちょ、ちょっと待ってよ…典人っ!」

慌てたような声を無視して部屋を後にする。
思えば高校の時からこんな事ばかり繰り返していて、我ながら最低だなと思う。
その内刺されて死んじまうんじゃねーの、と未だに付き合いの続いている浜野は笑うが、
それはそれで良いかもしれない。

見上げた空は晴れているはずなのに、どうも淀んで見えてしまう。
あの日からずっとだ。
南沢さんとボールを追いかけていた時に見上げた真っ青な空は、もうない。

俺は空から目を逸らして、地面を見つめたまま下宿先のアパートへと帰路についた。





+++






いつも通りサッカーの練習を終えて大学を出ると、とっくに辺りは暗くなっていた。
今日はバイトもないし、さっさと家に帰ろうと駅に向かう道のりの途中で有名なコーヒーストアの見慣れたロゴマークが目に付いた。
普段は滅多に行かないが、俺も晴れて大学生になった訳だし1人でこういう店に寄って帰るのも悪くない。

「こんばんは、ご注文は如何なさいますか?」

愛想の良い女性の店員に、カフェモカを注文して会計を済まし、カウンターを移動する。
受け渡されるのを待ちながら、
棚に飾られたクッキーやマカロンに目を奪われていると、コン、と容器がカウンターにぶつかる音がした。

「えっ?」

反射的にそれを見て、俺は目を疑う。
イメージしていたカフェモカの姿はそこにはなかった。
上にホイップがこれでもかとこんもり盛られただけでなく、容器の半分以上がホイップで埋め尽くされている。
ホイップ多めとか言ってないし、そもそも多めに注文してもこんなに乗せてこないだろ。
何の悪ふざけだよ、とそれをカウンターに置いた店員の顔を見て、俺は一瞬心臓が止まったような気がした。





「みっ…、なみさわさ…ん…?!」







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