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あの日見つけたあの表情~君を見つける10のお題~
[VOCALOID/カイマス]
「オイ、カイト。」
「なんですか?」
「暑いんだけど。」
「僕は丁度いいです」
パソコンに向き合う俺の背中から動こうとしないカイトを顔だけで見て溜息をつく。
べたべたとくっ付きたがるカイトは特に邪魔、というわけじゃない。
でも、好きなヤツが背中にくっ付いてると思うと体温は上昇するばかりだ。
「マスター、暖かいです。とても」
「そうかい」
そんな俺の心情を知ってか知らずか、カイトは嬉しそうに微笑みながら俺の背中に額を当てた。
カイトも体温はあるものの、人の平均を保っているのか気温が上がろうが下がろうが風邪を引こうが、その温もりはほぼ変わらない。
今は俺が暑いのと緊張とで体温が上がっているようなので、カイトの触れている部分は僅かにぬるい。
「お前はぬるい。」
「え……ぬるいって、なんだかあまり良い気分にはなりませんね」
苦笑いするカイトを無視して、カタカタとキーを叩く。
俺が相手してくれないのが寂しい、なんてことは口にしないまでも、カイトの行動からありありと見て取れた。
こうしてデレデレしてくるわりに、抱きしめたりキスしたりなんていうことは自分からしないカイト。
何となく、本当に何となくなんだけど、俺ばっかり好きな気がしてるわけだ。
(奥手ってわけでもないしなー)
して欲しい、と言えば多分なんでもしてくれるだろう。
でも俺はそれじゃ満足が出来ないと考えている。
自主的にカイトから言い出してくれないと、してくれないと嫌だ。
こういうのはきっと人間のエゴなんだろう。
「マスター。」
「なんだよ」
「……もっとくっついてもいいですか?」
さっきまでは背中の辺りから聞こえていた声が耳元で聞こえて、僅かに身体を硬直させた。
引きつった顔で振り向くと、カイトが何時もの優しい微笑みではなく、真剣に俺を見てる。
あ。
「……前触れもなくキスしやがったなテメェ」
口を押さえて睨みつけると、すみません、とカイトが一言謝った。
それに無性に腹が立って、謝るくらいならするな!と一喝しようとした時だ。
「……あまり、見ないでください」
俺は今まで、こんなカイトを何回みたことがあっただろう。
多分、片手で足りるほどの数しかない。
照れて、バツが悪そうに視線を逸らすカイトを見て、俺はなんだか、そう、キュンとしてしまった。
「……性質悪いな、お前」
「え?何がですか?」
「そういうところだよ…このバカ」
急に元に戻っておろおろしだすカイトを横目に見つつ、机にぐったりと倒れこんだ。
この天然タラシと一緒にいる間に、何回こうして心臓が壊れることかとぼんやりと憂いて、溜息をついた。
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