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君を見つけてしまったあの日~君を見つける10のお題~
[TOA/ジェイアシュ/ED後捏造]



「ぼさっとしてんじゃねぇ!屑が!」
「え…っうわ!」


ルークがしゃがみこんだ直後、頭があった位置に鋭い牙が襲い掛かった。
自分が相手していた魔物を剣でなぎ払い、アッシュは舌打ちをしてルークが相手していた魔物へと譜術を放った。
魔物は炎に焼かれて消滅する。


「悪いアッシュ、助かった!」
「礼なんざ言ってる暇があるなら、さっさと次の魔物を倒せ!」


森の中を探索中に、魔物の群れと出くわしてしまったのが数分前。
これは相手しきれないと踏んで逃げたのがその直ぐ後。
しかし逃げ切るよりも先に、そこでアッシュと合流してしまった。
挙句の果てには行き止まり、というどうしようもない事態に陥った今、自分達よりもかなり多い魔物を相手に、現在はなんとか善戦しているといえる。


「こんな時は、アッシュと合流できたことが喜ばしいですねぇ。一人でも戦える人が欲しい状況でしたし。」
「俺はこんな状況を引き連れてきやがったお前等の巻き添えを食ってるわけだ…後で見返りは貰うからな」


必死の表情で戦っているルークたちとは裏腹に、まだ余裕のありそうな笑みを浮かべて譜術を発動させるジェイドを、アッシュが鋭く睨みつける。
その一瞬の隙を見計らって、一匹の魔物がアッシュへと乗りかかった。


「しまっ……クソ!」
「アッシュ!」


牙は剣で受け止めたもものの、その勢いに押されて体勢を崩し、アッシュは仰向けに倒れてしまう。
ジェイドのらしくない焦りを含んだ声を聞いて、アッシュは一瞬魔物の存在を忘れるところだった。
自分に乗りかかり再度牙を向けてくる魔物との距離が近すぎて剣は思うように使えない。
殴るか蹴るか、武器を使わずに魔物を吹き飛ばそうとして一時的に剣から手を放した瞬間、魔物の牙がアッシュの喉元を狙って襲い掛かった。


「くっ……!?」
「キャイン!!」


かわすことが出来ないと思ったアッシュは、せめて急所は噛まれないようにと腕を交差して喉を護ろうと身構えた。
しかし魔物の牙がアッシュへ届くよりも先に、魔物は衝撃を受けてアッシュの上からはじき出され、地面へ叩きつけられる。
何が起こったのかを把握するよりも先に腕を引っ張られ、無理やり誰かに立たせられた。


「大丈夫ですか?アッシュ」


槍を片手にアッシュを引き起こしたのはジェイドだった。
アッシュを見るジェイドの背後から魔物が飛び掛るが、それを難なく槍でなぎ払う。


「今のは…お前か?」
「ええ。珍しいですね、貴方が不覚をとるなんて」
「っうるせぇ!放せ、自分で立てる!」


乱暴に腕を振ってジェイドの手を振り払い、地面に転がしたままの自分の剣を取って振り上げた。
しゃがんだアッシュを狙った魔物が一刀両断にされ、血しぶきを上げて地面へ転がる。
その鮮血を僅かながらに浴びたアッシュは眉根を寄せて、服の袖で顔を拭った。


「どうやらルークたちと離されたようですね。」
「何?」
「姿は見えますが、ティアの譜歌が聞こえない程度には距離が開いたようです。」


ジェイドの言葉を聞いて辺りを見渡すと、群れを挟んだ向こう側にルークたちの姿が見えた。
どうやらジェイドとアッシュだけが孤立して囲まれているらしい。


「ハッ。上等だ。片っ端から蹴散らしてやる。」
「頼もしいですねぇ。頑張ってくださいよ。」
「テメェも働け!この屑が!」


アッシュの叫び声を切欠にして、最前列の魔物が飛び掛る。
剣を二度なぎ払い、アッシュは隙を見て技を放ち、一気に魔物を蹴散らした。
魔物が怯んだ隙を見て、ジェイドが詠唱を始める。
その声を聞いたアッシュはジェイドを狙う魔物を全て排除していった。


(相変わらず無駄の無いいい動きですね)


敵を切り裂いた勢いを殺す事無く身を反転し、さらに勢いの増した刃で敵を切り裂く。
その度にアッシュの紅い髪が舞い、まるで剣舞を見ているかのようだった。


アッシュと目が合った瞬間、合図を送って魔物との間に距離をとらせる。


「------大地の咆哮。其は怒れる地龍の爪牙。グランドダッシャー!」


譜術が発動すると同時に、地面から突き出した岩によって魔物が次々と消滅していく。
あらかたの魔物が片付いたのを見てアッシュは息を吐いて剣を地面に突き刺した。


「時間稼ぎ、ご苦労様でした。」
「ふん」


汗を拭うと、アッシュは剣を抜いてまだ戦っているルークたちの方へと足を向ける。
ジェイドはその背中を見て、何故かアッシュの頭をなでてやりたい衝動に駆られた。


戦闘で無駄な動きが少ないということは、それだけ実践を積んできているということだ。
まだ17という歳で、あれだけの動きが出来ることは酷く悲しいこと。
それほど多くの命を奪っているということだ。
普段ならば、望んだことではないにしろ、軍人である以上仕方の無い事だと割り切っているはずなのに、何故か今はそうは思えない。


(まさか、彼が危うく怪我を負うところだったから)


魔物に襲い掛かられたアッシュを思い出し、僅かに目を細める。
たかがその程度のことであんなにも取り乱すとは自分でも思わなかった。
アッシュですら、ルークがやられそうになった時も、自分が危ぶんだときも冷静だったというのに。


(…今まで私にはそういった感情はないのだと思って居たのに)


ジェイドが目を伏せようとした時、不意にアッシュが振り返った。
何事かと思いながらも、何時もの表情を崩さずにアッシュへ問いかける。


「どうかしましたか?」
「……さっきは助かった。あ……」


続いて何かを言いかけたが、アッシュは苦々しい表情をした後、これで意味は伝わったと思ったのか荒々しく前を向いて歩きだした。
まさか、あのアッシュから礼を言われるとは思っても見なかったジェイドは思わず目を見開き、呆然とその場に立ち尽くす。

一瞬-------


振り向き、苦々しい表情になるまでの間の、ほんの少しの間に見せた表情。
それは歳相応に恥じ入った赤面で、およそアッシュらしくないといえる。
ジェイドはその表情が鮮明に記憶に残っていることに気付き、まさか、と呟いて口元を手で覆った。


(まさか、こんな時に)


ジェイドは、今初めてアッシュという青年を見つけたかのような錯覚を覚えると共に、
その青年に心を奪われた自分に気が付いた。










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