『私の名も、お前の名も、薔薇に縁のものなのだよ』
物心つくかつかないかの頃に何気なく先生に問いかけた記憶を今まで覚えていた事に、今、私は自分の記憶力へとあらん限りの褒め言葉を送ってやりたい。
それを覚えていたからこそ、先生がくれたこの1輪の意味を判らないなどという事がなくてすんだのだ。
赤と白、バイカラーの薔薇。入り混じりながら共存する、鮮やかな2色を結ばれた薔薇。――まるで先生と私のような。
1輪の花をつけた株は、その年最高の幸福をアルバフィカにもたらした。
決して枯らさないと強く強く誓うほどに。
この薔薇が、増えればいい。魔宮薔薇よりも多く、強く。たとえ私が聖戦で死した後でも。
赤と白のバイカラーの薔薇、それは先生からの絆の形ある証であればこそ。
幼い自分にも視覚で判るようにとのルゴニス手ずからの贈り物を、アルバフィカはその後、命尽きるまで枯らす事はなかった。

……毒薔薇の園から少し離れた、風向きまでも計算されつくした絶妙な立地の小さな園に、ルゴニスとアルバフィカの名を体現する無毒の薔薇は現代も咲き誇っている。


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