【御礼】嫉妬

あなたの拍手に感謝を込めて。






カン カン カン カン



シュゥウウウ……



「よし!」



イレブンは本日も鍛冶に没頭中だった。邪神との闘いが終わってからも鍛冶はイレブンの趣味だった。

邪神が消えても魔物はいるし、イレブンの腕はそこいらの武器屋なんかよりも性能が良いので、寄る・町寄る村で大評判だ。

お陰で魔物討伐なんかしなくても十分に食べていける。



つまらないのはカミュだ。



今までだったらカミュが盗みで稼いで、それでイレブンにお腹いっぱい食べさせていた。

カミュとしてはそれが嬉しかったし、支えているという彼の兄心を刺激してくれていた。



だが今や、メインの収入源はイレブンの鍛冶。



確かに腕はいいし、自分があげたやつだし、その武器のお陰で邪神に勝利したのだから、感謝をしているのは本当のことだ。だが、悔しいのも本音だ。



もっともイレブンがそれを自慢してくることはないし、カミュに何か言ってくることだってない。

だがそれが「あえて触れないようにしている」気がするほど、イレブンの鍛冶屋としての能力は勇者の相棒たる世界一の盗賊を苦しめていた。



「みてみて!新しい装備品出来たよ!」

「おお、すげぇじゃねぇか。流石だな。」



パチパチと拍手をしながら感情が90%ほどしか詰まっていない感想を伝えると、

イレブンはテヘヘと照れ笑いしてくれる。



「(まぁ笑ってんの可愛いからいいんだけどよ…)」



込められていない10%の感情を察したのかイレブンは少し悲しそうな顔をする。

イレブンもまたカミュの様子がおかしいことには気づいていた。







「今度の目的地なんだけどね?」



キャンプファイアーで作ったシチューを頬張りながらイレブンが次の予定の提案を始める。少し不安そうな顔をしているのが気になった。



「あの、めんどくさいかもしれないんだけど。」

「気にすんなよ、言ってみろよ。」

「あの…レジェンドウルフ討伐に行きたいな、なんて…」



レジェンドウルフってことはまた鍛冶が、という気持ちを顔に出さないように努めつつ、笑顔で了承してみせた。

イレブンが安堵して笑ってくれたおかげで、胸の中でひっかかっているものを押し戻すことが出来た。





シケスビア雪原へやってきた。



「よーし、夜になるまでがんばろうね!」

「ん?キャンプもあるし、もっといけるぜ?」

「えー、寒いもん。ちゃんと宿屋いこうよ。カミュは慣れてるかもしれないけど。」

「うし、じゃあ夜まで頑張ろうぜ?」



普段なら粘るのがイレブンの常だったが、寒がりなのはいつも通りだ。

二人はとにかくレジェンドウルフを探して徘徊する。対象はすぐに見つかった。



「カミュ!」

「おう、解ってるって。」



イレブンはレジェンドウルフを求める時は、だいたいアレキサンドライト狙いだ。

今日もそうだろう。普通に盗みかかれば手に入るはずだが。





チャリーン



「よし!」



さっとくすねたアイテムを見る。



「(やべ、うっかり盗賊の本能で高いやつとっちまったぜ)」



イレブンの狙いは素材なのに、うっかり違うものをくすねてしまった。



「なんだった?」

「わりぃイレブン。」

「なんで?」

「けど、おまえが欲しいのは」

「それ神話の鎧だよ!?すごいよカミュ!さすがだね!」



と、イレブンは満面の笑みをたたえて全力で拍手してくれる。



「でもお前が欲しかったのはこいつじゃねぇだろ?」

「けど鎧の方がよっぽどすごいよ!売ったら今日はご馳走だね!」



なんて言われると、素直に嬉しい。



久しぶりにイレブンのこと喜ばせてやれたな、なんて思ってしまう。

そしてはたと気づいた。



「(喜んでもらえるだけで嬉しいんだもんな、俺も素直に喜ぶべきだったよな)」



カミュは鍛冶に嫉妬するあまりイレブンの気持ちを慮ることを忘れていた。

イレブンが何時も嬉しそうに「出来が良い装備作れたよ!」って言ってくるのは、きっと自分に喜んでもらいたいからなのだと。

イレブンにとって嬉しいことは、喜んでもらえることなのだと。



イレブンの本心がどこにあったのかは分からないが、カミュは自分に出来ることが一杯あったことを思い出した。



「よっし、どんどん盗るぜ!」

「うん!けどまずこいつ倒さないとね!」



お宝を盗まれてお怒りなレジェンドウルフが襲い掛かってくる。

もっとも世界を救った勇者ご一行のうちの2名とはいえ油断さえしなければ敵ではない。

さくっと討伐しおえた。



「うし、じゃあ次いくか。」

「うん!」

「今度こそアレキサンドライト盗ってやるからな。」

「えへへ、でもどっちでもいいよ?お金出来たら美味しいものたべよう!」

「…なぁイレブン。」

「なに?」



イレブンが剣を仕舞いながら不思議そうな顔をする。



「あのさ…なんか悪かったな?」

「え?」

「あ、いや…意味はなかったのかもしれねぇけど…。」



イレブンの鍛冶の愛への嫉妬は自分でも見苦しいと自覚はあった。

でも、このしょうもない嫉妬を繰り返す自分はもっと見苦しいだろうから、今のうちに憂慮の根をつぶしておきたい。



「ここんとこ、俺が心ここにあらず、って感じだったの気づいてただろ?」

「…そこそこ。」

「なんかさ、イレブンの役に立ててねぇなーってモヤモヤしててさ。」

「僕はカミュが傍に居てくれるだけで嬉しいんだけどな…」

「俺もそれはそうなんだけどよ。…いいとこ見せたいだろ?」



思っていたことを素直に告げると、イレブンはへへっと笑って腕に抱き着いてきた。



「カミュはいっつもかっこいいよ?」

「それは知ってるけどよ。」

「じゃあ今日はもっとかっこいいところ見せてね。」

「おう!」

「何時もより稼げたらどこかでゆっくりしようね?あったかいところが良いね。開放的だし。」

「開放的…」



カミュは驚きつつ開放的なイレブンを想像する。



南国の日差し、温暖な気候。青い海、白い砂浜。

開放的な恰好でお誘いしてくるイレブン…!!!



『あったかいから、服きなくても寒くないね?けど、もっと熱いことしちゃう…?』



ゴクリ…



「…俺のナイフが熱く唸るぜ。」



昨夜からあった憂いは跡形もなく消えていた。獲物の先に南国の開放的なイレブンの姿を幻視する。



「イレブンと…南国デート…!!!」



ここで頑張ればあれこれおねだりできるはずだ。俺のバカンスは俺の稼ぎに懸かっている。



「うし、次の獲物探すぞ!」

「うんうん!がんばれカミュ!」



とりあえず元気になって良かった。

イレブンは一抹の不安をいだきながら、手を叩いてその背中を見送った。







カミュの頑張りにより、イレブンに受難が訪れるのは2日後のことだ。









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