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「たとえばさ」
 夜の静けさの中、そろそろ寝室へ引き上げようかという時間。真新しい食卓に向かい合って、ジェイドが言った。
「役割を逆にしたらどうなると思う?」
「……何の役割?」
 どことなく嫌な予感がして、俺はジェイドの顔をじっと見た。
 ランプの灯りにほんのりと照らされる表情は、生真面目で何を考えているのかつかめない。
「俺が抱く方をやったらどうか、って話だ」
「ぶっ」
 まるで狩場の傾向と対策を語るような口調で、あっさりと言って放たれた言葉に、俺は思わず吹きだした。
「お互い、付いている機能は同じなんだから、どっちもできる訳だよな」
「待て、ちょっと待て」
 俺は両手を上げて制止する。
 なんだそのやる気満々な気配は。
 何となく恐怖を感じつつ、恐る恐る聞いてみる。
「……したいのか?」
「してみたらどうなるのかな? と思って」
 ああ、やる気満々なんじゃなくて、興味津々なんだな。
「意外と可愛いんじゃないかと思うんだが」
「やめてくれ……、て言うか、前にも止めてくれって言ったような気がする」
「そうだったか?」
 と、首を傾げる。
 複雑な気持ちでちょっと考えてみた。
 俺が? ジェイドに抱かれる?
 まあ、やり方は嫌って程知ってるだろうから、あんまり痛い事はされないだろうが……。
「やっぱ、ちょっと、……勘弁してくれ」
「どうしても?」
「……なんか、すげぇ、……調教されそうな気がする」
 不意に沈黙が降りた。
 ランプの芯が燃える微かな音だけがする。
「……ちっ」
「舌打ちするなよ!?」
 やる気だったのか!? ていうかどこまでやる気だったんだ!?
 怖くて聞けない!!
「まあ別に、現状に不満がある訳じゃないから良いんだが」
「満足してもらえるように頑張ります……」
 勝ち誇ったような笑顔が、ジェイドの顔に浮かぶ。
 手を差し伸べると、わかっているとでもいうように身を乗り出す。
 頬に手を添えて、立ち上がって腰を浮かせながら口づけた。



 灯りを落とした後の身体は情熱的で、甘えてねだる声が愛しい。
 これが逆になったらとか、正気なところ想像もつかないが。
 今の立場はなんとしてでも死守しなければ。
 飽きられたらきっと調教される……。



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