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エヴァ、カヲ→シンで、映画(破)ネタバレを含みます。
(もう失敗はしない。今度こそ、君だけは幸せにする。)
切望
人口羊水の中で育てられて、自我が芽生えた時には、最後の使徒として存在していた。
地下のリリスと接触しサードインパクトを起こす―――それが、役割だった。
前回は、セントラルドグマ内でシンジに酷い葛藤と、絶望、悲しみを与えてしまった。
カヲルはその事を酷く悔いていた。
自らが知る範囲の中で、あれほど大人に翻弄され、大人の都合で自身の願いを抑圧し、
迷いと葛藤の中に居る子供を、カヲルは知らない。
だからこそ、彼には幸せになってもらいたかったのに。
彼を生かし、彼のために死を望んだはずだったのに、
深い喪失感と悲しみを与えてしまった。
結局、その後も大人は全てを彼に頼り、彼はそれに答えようと更に傷ついていた。
だから。
「今度こそ、君だけは幸せにしなければならないんだ。
それが、僕の役目だから。」
前回と大きくは流れを変えられない。
だが、少しずつ変更は加えられる。
碇ゲンドウとのすれ違いを、極力少なくした。
彼があまり傷つかぬように、心を痛ませないように、ファーストの自虐的性格を緩和した。
前回、彼の心に深く入り込んでいたセカンドとの接触を減らし、
彼の友達はエヴァパイロット候補から外した。
彼と、彼を取り巻く環境に少しずつ手を加え、
前回とは異なるシナリオを歩ませる。
それが、今回のサードインパクト。
「シンジくん…寂しいけれど、今度は、僕と君は友達じゃないんだ…。
もう二度と、君を苦悩させたくないから。」
カヲルは寂しそうに笑った後、エヴァに搭乗する。
「だから、今度は、一思いに殺してくれよ。」
シンジのために全てをやり直す、二度目のサードインパクト。
感情のないカヲルの瞳から、行く筋も涙が伝い落ちる。
「…涙…僕は、悲しいのか…」
呼吸が苦しく、胸の奥が握りつぶされるような痛みを感じた。
(シンジくん、君の幸せを願っているのに、
その幸せのため、君と言葉を交わせない事が、僕はこんなにも辛い――)
エヴァの中、人口羊水に溶ける涙を一瞥し、
カヲルは眼下のエヴァ初号機を見下ろした。
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