拍手をありがとうございました。


完結へ向けて頑張りたいです。

メッセージを下さった場合、お返事は活動報告でさせていただきます。


本来ならお礼の小説を置くべきですが、今は物理的に余裕がありません。
そのかわりといってはなんですが、おまけ的なものを用意しました。
自分の中でいろいろと理由があってボツにしてしまったお話です。
もともと「第四章14有希子の告白」と「第四章15語らいのとき」の間に入れる予定でした。
一応完成しました。
随時編集を行いますし本編に組み込むかもしれません。
お読みにならなくても本編の流れには支障がないです。
というわけで、おまけ的な話、もしよろしければどうぞ。
                                         Liah   2011.9.5
      

『The reason』第四章14と15の間  「切ない誤算(仮)1」





「新ちゃん、お客さんよ」

久しぶりに会った素晴らしく綺麗なそのひとは、
階段の手摺に手を掛け階上を見上げてそう言った。
玄関ホールは吹抜けになっていて、柔らかなその声は反響した。
おばさまはにこにこしながら「どうぞ」と白い手を奥の方へ向けて伸ばしてみせた。
私は精いっぱいの愛想笑いを浮かべて会釈をすると、言われるままにスリッパを履く。
そして小さい頃には何度も来たことのあるリビングへ通された。

いきなりの想定外の展開に、私は怯みそうになる気持ちを奮い立たせる。
ソファを勧められあやふやな笑顔のまま腰を下ろすと、
おばさまは「ちょっと待っててね」とドアの向こうに消えた。
私は早くもどっと疲れてしまい、はあーっと大きくため息をつき、
思い切りソファの背もたれに寄り掛かった。
相変わらずの美貌の母上は、果たして息子がしでかしたことを知っているのだろうか。
しでかしたこと……。私もよく事情が飲み込めてはいないのだが。
でも、少なくとも深く傷ついている人間がいるのは確かだ。

次にドアが開いて入ってきたのは新一君だった。

「おう、園子、久しぶり」とぬけぬけと言うのだが、
私の用件は百パーセントわかっているはずだ。
私が返事を返す前におばさまが紅茶を持って現れ、「ご家族の皆さんはお元気?」と始まり、
しばらく社交辞令の会話が続いた。
おばさまが「ごゆっくり」と引っ込むや否や、私は真顔に戻り新一君に向き直った。
自然に眉がつり上がる。

「ちょっと、どういうことなのよ」

思わずテーブルを手の平で打つとバンと大きな音がして、
私は慌てて入口のクラシカルなドアの方を見る。
けれどもおばさまが驚いて顔を覗かせるようなことはなかった。

「蘭から聞いたわよ。あんた、他に女ができたって?」
「何だよいきなり……。蘭がそう言ったのか」

私の突然の詰問にも新一君は逆に探りを入れてくる。

「私が新一君に訊いてるのよ。
昨日蘭に私んちに行くように言ったのは新一君でしょ」
「ああ、いろいろあってさ。迷惑かけて悪かったな」
「まあ、そんな事はどうでもいいわ。
うちへ来た時から蘭の様子はおかしかったんだけどね。
どうかしたのって聞いても、なんにも言わなかったのよ、その時は」

新一君は頷いて紅茶を一口啜ってから、「それで?」と先を促した。
その平静な態度に私はますます苛立った。

「で、そのあと新一君、蘭に電話したでしょ。
話が終わったみたいだなって思って部屋に入ったら、
蘭はもう涙目になっちゃってて。
急に帰るって言い出すし。どうしたのって聞いたら、
新一君には彼女がいるみたいだって」

一気にまくしたてると喉が渇き、私も紅茶を一口ごくりと飲んだ。
ダージリンの渋みが口の中に広がり、
いつもは使う砂糖を入れ忘れたことに気がついた。
しかしもちろん今はそれどころではない。
私は両手をテーブルについて身をのり出す。

「今は詳しく話したくないって言うから、ちゃんとした話は聞いてないんだけど、
あの哀って子のお姉さんだとか言うじゃない。
あんた、女房ほったらかして何やってるのよ。
ねえ、何かの間違いなんでしょ?」
「園子がここに来てること、蘭は知ってるのか?」

新一君はまた私の質問にはすぐに答えず、静かな口調で返した。
蘭の事を女房と言っても、いつものように顔を赤くして否定したりはしなかった。

私は嫌な予感で頬の筋肉が硬くなるのを感じた。


                    


           「切ない誤算(仮)2」へつづく




読んで下さりありがとうございました。
このあと「切ない誤算(仮)2」を載せています。
レイアウトの関係で変なところで改行してあります。               Liah




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