「っ…ぁ」
胸元を探る手が、徐々に下へ降りていく。
その手を制止しようと掴んだところで、目の前の男に意味ありげに見つめられて、自分の立場を思い出した。
唇を噛みしめると、男の反対手の手が伸びてきて唇をなぞる。親指を押し付けられて、大人しく唇を開いた。
「…ふっ、う」
「いい子だ」
促されるまま舌を絡めると、耳元で囁かれる。その少しかすれた声が、あの人を思い出させて俺は目を閉じた。
じゃあ、これ。
男は白い包みを俺に手渡して部屋を出ていく。
俺は疲れた体を起して、包みを握りしめた。これで、あの人はあと数カ月は生きられる。そう思えば、涙なんて出なかった。
|