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【プロヒ勝デク】
王様ゲームでキスをする羽目になった勝デク(既刊『キスからはじまるエトセトラ』とは別ルートの話)
BOOTH通販の特典におつけしたペーパーと同じ内容になります。お陰さまで頒布終了となりましたのでこちらで公開させていただきます。









「1番と7番がキーッス!」
 座敷に響き渡った峰田の声に爆豪と出久の顔がさあっと青ざめた。爆豪の手の中の割り箸に書かれた数字は「1」、出久のそれは「7」だったのだ。バキッと割り箸をへし折って爆豪は思った。
 ――王様ゲームなんて、やるもんじゃねェ

「なんっで俺が!」
「そんなの僕だって……」
 嫌じゃないけど、と出久は心の中で呟いた。しかしそんなことを口に出せるはずもなく、出久は本音がうっかり顔に出てしまわないようにするので精一杯だった。
 そんな出久の動揺など露知らず、級友たちは大盛り上がりだ。
「おやおや~爆豪にも不可能なことがあるのかな~」
「うっせえ! 好きでもねェやつとできっかよ、気色悪ィ」
 好き、という単語に出久の心がつきんと痛む。
 ――その好きでもない僕を抱いてたくせに
 爆豪が誰とでもキスができるような軽薄な男ではないことは確かだ。彼はそんな不誠実な付き合いができる人じゃないからだ。彼にまつわる数々の浮名も、どれもガセだということを出久は知っている。
 あの頃も彼はある意味誠実だった。周囲にバレるような言動はしなかったし、ゴムは必ず着けてくれたし、痛いことや痕が残ることはしなかった。そして、一度もキスをしなかった。誠実なセフレだ。
 卒業と同時に断ち切れてしまったその関係を彼はどこまで覚えているのだろう。

 ――好きでもない相手と寝ることなんか、できないくせに
 思い返すのは、卒業式前夜のこと。その晩、爆豪は珍しく繰り返し何度も出久の身体を求めた。それまでは2回もすれば満足して離れていたのに。
 空になったコンドームの箱を覗き込んで舌打ちをした爆豪に「いいよ、着けなくても」と言ったことも、熱い体液に腹の奥を充たされる感覚もどちらもはっきりと覚えている。胸元に痕をつけられたのもその時が最初で最後だった。

「ッざっけんな! やらねーっつったらやらねェんだよクソが!」
 爆豪の声に、影も形も残っていないはずの胸のうっ血の痕が疼くような気がした。
 ――ふざけてるのはどっちだよ
 出久は立ち上がってテーブルを回り込むと、爆豪の側へと近づいた。そうして、すっと畳に片膝をつく。
「…ンだよ」
 といぶかる爆豪の胸倉を掴み上げると、出久は無言で爆豪の唇に口づけた。キスと呼ぶにはあまりに乱雑な接触。それでも、鮮烈に舞い戻った遠い日の熱情はちりちりと出久の胸を焦がした。
 唇を離すと、視界いっぱいに爆豪のまん丸になった赤い瞳が飛び込んできた。いつも余裕たっぷりに自分を見下ろしていたその目が驚がくに小さく揺らめいていることが面白かった。
「て…っめぇ……」
 言葉を失う爆豪に、出久は聞こえるか聞こえないかという声でそっとささやいた。
「意気地なし」

 ――なかったことになんかしてやるもんか









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