バレンタインデー雲雀さんとカウントダウンは0のヒロイン夢
外に出ると周りはバレンタイン一色だ。女の子が男の子に愛を打ち明けるきっかけとなる日。私には凄く好きな人が居て、相手も私を大切に思ってくれているということに最近やっと気付けた。一度家出をしたけれど、今は仲直りして一緒にまた暮らせている。今は長期任務にいく時は前もって教えてくれる。だから不安になることは凄く少なくなって、幸せな日々を彼と過ごせていた。バレンタインに私も彼にチョコレートを渡したいとは思うのだが、彼は甘いものをあまり食べるイメージが無くて(食べてる所を見た覚えがない)、チョコレートを渡すことで彼を困らせてしまうんじゃないかと思い、渡すべきかどうか悩んでいた。まだ作ってもないのだが、私が彼にチョコレートを渡したら、彼は優しいから無理して食べてくれるかもしれない。逆に「こんなもの食べるわけ無いだろう」といって捨ててくれたら嬉しいのだけど、きっと捨ててしまうことは無いように思う。それは最近仲直りしたばかりだし、優しいし、さりげなく気を使ってくれているのが伝わるから。 「どうしたらいいですか?」 私は今私たちの家に居ない雲雀さんに会いにきた沢田さんに相談していた。 「どうしたらって言われても・・・」 「沢田さん・・・」 「いや、俺も全く同じことを思ってます・・」 「じゃぁ、沢田さんは一緒に住んでいる女性からあんまり好きじゃない食べ物貰ったらどうですか!?」 「雲雀さんはチョコ嫌いかどうかも分からないじゃないですか・・・」 「そこは良いんです!どっちか分からないなら、悪い方に仮定するものです!」 「はぁ、そうですか・・・とりあえず、思うのは、好きな人に貰えるものは嫌いなものでも嬉しいです。」 「ほんとにー?」 「そんな思いっきり疑ってますって顔で見られても・・・」 「そんなことないです」 「・・まぁ、バレンタインデーですから、それって気持ちを形としてあげるものですから、嬉しいと思いますよ」 「・・・そうか・・・」 「何でも無い日に嫌いなもの貰ったらえ?ってなりますけど、そうじゃないですからね・・」 「・・・確かに、沢田さん!ありがとうございます!」 「い、いいえ」 「今から準備します!」 「え?今からですか?」 「はい!どっちにしてもランボ君にはあげるつもりだったんで、材料はあるんです」 「なるほど・・・」 「はい。沢田さんの分も作るつもりだったので、貰ってください」 「え?あ、ありがとうございます」 「いいえ、感謝の気持ちを形にして表してますから!」 「そうですか・・・」 「よし、つくるぞー!」 私は恭弥さん以外にあげるチョコレートは無難なトリュフにしようと思っていた。生クリームとチョコを湯煎にかけ、火からおろし卵黄とラム酒をほんの少し入れかき混ぜ、冷蔵庫で丸まられるようになるまで冷やす。その間に恭弥さんに作るチョコケーキの準備に入る。失敗しても大丈夫なように沢山材料は買っておいた。だからなんとしても美味しいケーキを作りたい。ケーキなんて重たいかな?って思ったけど、小さいケーキにして、恭弥さんが一口だけ食べたら残りは私が食べても良いかなとおもったのだ。一応、恭弥さんが好きそうな大人の味付けにするつもりだが(ビターチョコ使ったり、砂糖少なめにしたり!)、それでも一口、口にしてもらえたらいいな位の気持ちで作る。とりあえず、材料をしっかりはかり、ケーキのクリームを作る。ビターチョコと生クリームを湯煎にかけ、出来たらラム酒を入れて常温で冷やす。砂糖を入れた卵白でメレンゲを作り、卵黄をマヨネーズ状にして卵白の半分と卵黄を合わせる。それに材料の粉類を全ていれる。そして溶かしたバターを入れて残りの半分のメレンゲを入れる。それを型に入れて空気を抜いてオーブンで焼く。上手く焼けることを祈りながら、晩ご飯用のお米を研ぐ。10分ほどで焼けるので、お米の準備をしたら、オーブンの前でまだかまだかと、待っていた。時間になって生地に竹串を入れ焼けているかチェック。大丈夫上手くいってる。出来た生地にシロップを塗ったくり、それを半分に切ってさっき作ったクリームを上に塗る。2枚を重ね、冷蔵庫で冷やす。うん、味見したいけどそんなことすると形が崩れるから出来ないな。恭弥さん食べてくれるかな?食べてくれたら良いな。あわよくば美味しいなんて・・・ううん、そんな高望みなことまで望んじゃ駄目だ。ただただ、恭弥さんが私の気持ちだけでも受け取ってくれて、喜んでくれたらそれで十分だ。喜んでくれたら。鬱陶しくないかな?重たくないかな?手作りのお菓子なんてうざいかな?大丈夫かな?どんどん不安は募っていき、やっぱり渡すのを辞めようかとも考えたが、此処まで来てそれももったいない。とりあえず、その事については後で考えることにする。ランボ君達ように準備したトリュフを一口大に丸めて、ココアパウダーを回りにまぶして完成だ。準備しておいた入れ物に入れて、ひとつ味見。うんおいしい。失敗しようがないだけある。無難な味に安心する。ランボ君も喜んでくれるだろう。問題は恭弥さんだ。とりあえず、渡すかどうかは別としてケーキにデコレーションを加えて、冷蔵庫で冷やす。晩ご飯の準備を終えて、今日私がやれる仕事は全て終わった。後は恭弥さんの帰りを待つだけだ。 「渡せるわけないよなぁ・・・」 「何を?」 「へ!?いつの間に?」 「?普通に帰ってきたよ」 「あ、おかえりなさい」 「ただいま」 「ご飯準備するね」 「うん」 ふたりでいつものように向かい合って、食事をとる。ちらりと恭弥さんの様子をうかがってもいつもと同じだ。食事を食べ終えて、食後にあったかいお茶を恭弥さんに淹れた。私の伺うような視線がずっと気になっていたんだろう。私が恭弥さんの前の席に座った時に恭弥さんは口を開いた。 「何?」 「え?なんでも・・・ないよ」 「言わないと分からないよ」 「え?」 「聞いて欲しそうな顔して、何も言わないって何?」 「別にそんなつもりじゃ・・」 「はぁ・・・別になんだっていいけど」 「・・ごめん」 「何?もっとどうしたの?何があったの?って聞かないと君は話せないのかい?」 「え?・・違うよ」 「さっさといいなよ」 「あの、ね・・・今日何の日だか知ってる?」 「2月14日・・・バレンタインデーか」 「そうなの・・・それで・・・」 「どこ?」 「え?」 「チョコレート」 「あ・・・持ってくるね・・」 貰ってくれるってことなのかな・・?私は作ったケーキを彼の前に持っていく。緊張して手が震える。恭弥さんどう思ってるんだろう。大丈夫かな? 「わお、これ手作り?」 「う、うん・・・」 「・・・美味しいじゃない」 「本当!?」 「うん」 「・・・はぁ・・・よかったぁ・・・・」 そんな風に言ってもらえるとは思ってなくて気が抜けた。嬉しかった。そんな風に言ってもらえて。にっこりと笑った私を見て恭弥さんも小さくでも優しく微笑んだ。 「甘いでしょ?コーヒー淹れようか?」 「うん」 「はい・・・」 「ねぇ、そっちの箱はなんなの?」 「こっち?こっちはランボ君とかに、あげる用」 「僕のはないの?」 「え?ないよ、だって恭弥さん甘いもの好きじゃなさそうだし・・」 「・・ふーん」 「はい、コーヒーどうぞ」 「うん」 「私も一口貰っていい?」 「うん」 「あ、良かった、美味しい」 「ねぇ、あの子供以外の分もあるよね、あの箱、三箱あるし」 「え?うん」 「だれ?」 「あげる人?」 「うん」 「草壁さんと沢田さんに・・問題ある?」 「・・・別に」 「そう」 そう言って恭弥さんはお風呂に入るようだった。私は彼の着替えの準備をして浴室更衣室に持っていった。私は部屋のソファに座って、クッションを膝に乗せていた。でも、恭弥さん思っていたよりも喜んでくれてたから嬉しいな。私があげたかったんだけど、恭弥さんの気持ちを私が貰ったみたいだ。やっぱり彼は優しいな。ケーキも何かといって私も食べたけど全部食べてくれたし。甘かっただろうに頑張ってくれたなぁ。嬉しくなって、膝にあったクッションをぎゅっと握りしめる。するとお風呂から上がった恭弥さんがいた。 「何してるの」 「え?いや、嬉しくって」 「何が?」 「恭弥さんがケーキ食べてくれて・・」 「・・そう」 「うん」 「僕は報告書書いてから寝るけど、君はどうするの?」 「私も明日の準備したら寝る」 「分かった」 「?うん」 何が聞きたかったのか良くわからなかったけど、特に何も聞かなかった。私は一通り準備を終えて寝室に向かい寝ることにした。眠ってから少しした頃に恭弥さんも仕事を終えてベッドに入ってきた。そして、さっきの質問の意味は理解出来た。そう、恭弥さんは私のことをその日愛してくれたのだ。そのとき彼が朦朧とした意識なのかで私にいってくれた嬉しい言葉が耳に響いてから私は意識を手放した。 「甘いものは苦手だけど、たまにはこういうのも良いもんだね」 拍手ありがとうございました^^ |
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