※現パロ。転生物もどき。ダテチカ







半年ほど前にこの部屋に引っ越してきたのは元親の方だった。同じ授業を取っている友人が声を掛けてきたのだ。

それまで住んでいたアパートの更新時期が迫ってきていたから、一も二もなく元親はその申し出を受けた。

ルームシェア、ようするに同居だ。

二人でならそこそこ広い部屋にそれなりの金額で住める。親元から離れて暮らしている元親には願ったり叶ったりだった。

ところが、その声を掛けた友人があっさりと元親を残して引っ越してしまった。

「悪い!けど、彼女がさあ、どうしても一緒に暮らしたいって言うんで…」

そりゃあ野郎と住むより可愛い彼女と住んだ方が嬉しいのは分かる。だから元親も特に文句も付けなかった。

上手くやれよ、と気持ちよく送り出してやったのだが…。

「けど、この部屋に独りで住むのはいくら何でも無理だよなあ…」

マンションとアパートの中間みたいな3LDKだ。独りで住むには広すぎるし、そもそも金額的に無理がある。

そんなわけで元親は今度は自分がシェアする相手を探す事にした。


「別に同じ大学の人間じゃなくても良いんなら、ここに張り紙でもしといたら?」

そんな事を言ったのは同じ大学の友人、前田慶次だった。

ここ、とは慶次がバイトをしている喫茶店だ。カフェと言うほど今風じゃなくオシャレでもない。やっぱり喫茶店というのが一番しっくり来る。

ただし、この近辺には大学のキャンパスが密集している。高校も含めれば学生の数はかなりの物で、この店もいつも学生で賑わっているのだ。

もちろんマスターが淹れるコーヒーが絶品というせいもあるだろう。

「張り紙ぃ?そんなもんしていいのかよ?」

「いいんじゃない?ほら、あそこ。マスターの知り合いが連絡場所とかにしちゃってるんだ」

見ると幾つかの紙がちょこんと張られていた。

何というか、本当に時代に取り残された感のある場所だと思う。尤もそんな所を気に入ってやって来る人間も多いらしいが。

「…………まあ、いいってンなら張ってみるか」

慶次がバイトしているからと言うだけでなく、元親も気に入っている場所だから。

張り紙を見てやって来る奴は、当然ここを知っている人間なのだ。

どういう人間が来るか、元親はちょっと楽しみだった。

「もしかして学生じゃなくてもOK?」

「別に構わねえぜ。俺は結構生活不規則だけど、そういうのを気にしねえ奴なら」

「じゃあ学生限定とか入れない方がいいね」

「おう、じゃあ頼むな、慶次」



慶次とやり取りをした時は、まさかこんな男が来るとは思わなかった。

「アンタが元親?これ、アンタが張ったんだろ?」

嫌みなほど男前な顔が元親に向かって凄味のある笑顔を振りまいていた。




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