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現在配布中の無料配布本小話です。

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「ゆりかもめさんが来たよっ!」

 久しぶりに浜松に顔を出した天浜線にそう言われ、東海道線は面食らった。
「え、ゆりかもめさんって……」
 東京まで毎日運行している東海道線が真っ先に思いつくのは、お台場臨海地区を通る路線・ゆりかもめ。
あいつがなぜ、こんな片田舎にやってくるのか。
 だが、そう思っていたのは東海道線だけだったらしい。
「おー、ゆりかもめ、今年も来たかー」
 あかでんは、ごくごく普通に話している。東海道線が感じたような違和感はついぞ見られない。
「今年のゆりかもめさんはどう?」
「うんうん、ばっちり」
「よかったなー」
 さっぱりわからない。
「あれ? でも、佐久米駅って工事してなかった?」
(佐久米駅? なんでまたそんなマイナーな駅に……)
 混乱している東海道線に思考などあさっての方向で天浜線とあかでんは会話を続ける。
「うん、まあ、工事はしてるけど。そこのところはみんなわかってるしね」
「そっかー」
 一人を覗いて和やかに話してるその輪の中に、
「お疲れさまです。なんか楽しそうじゃん」
 やってきたのは遠鉄バス。
「おー、おつかれ。ゆりかもめ、今年も来たって―」
(こ・と・し・も? あいつ、そんなに暇なのか?)
 どうやら、東海道線には、思考の根底から疑うという余地はないらしい。
「じゃあ、また見に行くよ、天浜」
「うん、きてきて。できれば僕の路線使ってくるように誘導してくれよ」
「それは難しいなあ」
「えー!」
 あははははは。穏やかな笑い声が、部屋を支配する。
 混乱した結果、仏頂面になった東海道線を置いてきぼりにして。
「あ、パンって用意した方がいい?」
「用意してもいいけど、こっちでもちゃんと用意してるから大丈夫だよ」
(パン? あいつ、洋食派だったっけ? っていうか、用意って何だ?)
 東海道線の思考は停止寸前であった。
(わからない。わからない! なんであいつが、ゆりかもめが……なんで!)
 しかし、他の皆は普通に話している。これは当たり前の出来事なんだ。
なんでだ! 普通おかしいだろ。あいつは東京生まれだぞ。
「どうした? 東海道。さっきからブツブツ言ってるけど……」
 あかでんに呼ばれて、東海道線ははっと我に帰った。
「いや、何でもない……けど」
 ここは勇気を持って聞いてみよう。聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥というではないか。
そう思った東海道線は、口を開いた。
「ゆりかもめって……誰?」
 天浜線とあかでん、遠鉄バスは顔を見合わせた。ややあって、口を開いたのは天浜線だった。
「誰って……ゆりかもめといえば渡り鳥だろう」
「へ? 鳥?」
「他に何があるんだ、国鉄さまよ」

 というわけで、天浜線佐久米駅に渡り鳥のゆりかもめがたくさん飛来しております。
餌付け体験や記念撮影もできます。
2月ごろまでの期間限定ですので、皆様天竜浜名湖鉄道をご利用の上、奮ってご参加ください。
 と、天浜さんが申しておりました。
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