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東方日曜者〜霊〜


夜が明けようとしている。
「ふあぁ……」
霊夢は欠伸を一つ。
普段からこんな早起きな訳ではない。今日はたまたまだ。
「二度寝は……出来そうにないわね」
悪夢を見た。
「何で夢の中にまで出てくるのよアイツは……」
まさか境界を操って介入してきたんじゃないでしょうね、などと根拠も意味もない事を考えながら、無意識に外へ出る。

夜が明けようとしている。
紫がかった空。脳裏には、夢にも現れたスキマ妖怪の顔がちらつく。
「ああ、もう!」
そう言うが速いか、霊夢は地面を蹴り上げ、空へ飛び上がった。

夜が明けようとしている。
太陽は少しずつ昇ってくる。
東から昇るそれを、迎えに行くが如く、結界ギリギリまで――。
「空から見る夜明けっていうのも、結構いいもんだな」
ふと後ろから声がかかる。
「あ、魔理沙」
「ああ、私だぜ」
いつもと変わらぬやりとり。
「あら、先客」
次に現れたのは紅魔館のメイド長、十六夜咲夜。
「……珍しいわね」
「私だってたまには早起きもするわよ」
「私だってたまには徹夜もするぜ」
噛み合っているようで噛み合っていない二人。
「おはようございます毎度お馴染み文々。新聞です本日の朝刊をお届けに参りました!」
そこに突然現れ一気にまくし立てたのは、最速の烏天狗、射命丸文である。
「この夜明け、お嬢様にも見せたいですねぇ」
「いや死ぬから」
「私は無視ですか!?」
「もちろんよ」
「暇潰し道具なら間に合ってるぜ」
「酷いです……」
あまりの言われように文は泣きそうな表情をしている。
「ま、気にするなよ」
「一番ストレートに酷い事言ったあなたが言わないでください!」
などと言い合っている最中、空間が裂けた。
リボンで両端を留められている。向こう側にはいくつもの目。
いつものスキマから、いつものスキマ妖怪が現れた。
「おはよう、霊夢。……あら、一人じゃなかったのね」
「紫!?」
「何よそんなに驚いて」
「い、いや別に……」
「ん、どうしたんだ?」
様子のおかしい霊夢に魔理沙が訊ねる。
「だから何でもないってば」
「おやおや、何やらスクープの匂いがしますねぇ〜」
新聞記者である文は早速文化帖――ネタ帳とペンと写真機を懐から取り出した。
「もしかして、夢の中に私が出てきた、とかかしら?」
「ちょっ、なんで……」
図星である。
「私がちょっと弄れば、夢と現の境界ぐらいなら……」
紫はしれっとタネ明かし。
「ゆ〜か〜り〜!」
「ほうほう。で、彼女はどんな夢を見てたんですか?」
霊夢の怒声は、興味津々な少女に遮られた。
文は紫にインタビューを敢行し始めたのだ。
「それはそれはもう乙女丸出しの夢よ」
「おお、気になります! ぜひ詳しく話して下さい。次の新聞の一面は決まりね……」
「紫、文、ちょっといいかしら?」
殺気立った霊夢の声。
文は恐る恐る、紫は楽しそうに霊夢の表情を確認する。
「なぁに、霊夢?」
修羅。まさに阿修羅だった。
「あんたらプライバシーって知ってる!?」
「あやややや……、マズいですね。でも私は新聞記者! 真実を、特ダネを掴む為なら命ぐらいは賭けますよ!」
「じゃあ、場所を変えましょうか」
「文、紫! もう許さないわ。宝具『陰陽鬼神玉』!」
霊夢は巨大な陰陽玉を練り上げる。
しかし、文と紫はスキマの中へと退避する。
「ほう、スキマの中ってこうなってたんですね」
冷静な新聞記者。否、パパラッチ。
「逃げましょうか」
そう言って、スキマから飛び出し空を駆ける。
「そうですね。っと、この逃走劇もいい記事になりそうですね……」
恐々と、しかしこの状況を楽しんでいる文。
「やれやれだぜ」
「まぁ、放っておいても大丈夫でしょ」
「多分、な」
傍観者に徹する事を決めた魔理沙と咲夜。
すでに日は昇り、夜は明けていた。



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