拍手ありがとうございます! 「サクラいる?」 ひょっこりと現れた先生にいち早く気づいてしまい、すこしびっくりした。自分の名前というのは、たとえ雑音の中でも紛れずに、ぴんと伝わってくる。 「サクラァー!カカシ上忍よ」 カカシ先生に声をかけられた先輩が金切り声で私を呼ぶ。眠い眼がぱっと覚めてはいっと慌てて立ち上がった。周りの同僚が少し笑った。私はふらつきながら先生の元へ駆け寄る。 「こんにちは。カカシ先生。どうしたんですか」 「うん。こんにちは。そのね、任務が入ったんだけど」 先生は私の顔をじいっと覗き込んだ。引き気味に一歩下がるが、先生も食い下がる。眠たげな目がにやりと笑った。 「お前、やつれてるねえ。いつから寝てないの」 「・・・・・・えっ。わかりますか」 「隈がくっきりと残ってるよ。肌も荒れてるぞ」 いやだ。頬を両手で隠して今頃恥ずかしくなっても、もう遅い。先生の前ではしっかりとしたかったのに! 「そんなに忙しいのか。ちゃんと休んでいるか」 「ちょくちょく寝てはいますけど。ここ4、5日は家に帰ってないです」 「あら」 先生はううんとすこし考える素振りを見せた。 先生の方こそ眠そうな片目が覗いているのに、頭は冴え切っているのだろうとすこし羨ましい。と今だ離れない両手で赤らんできた顔を隠しながら思う。 「任務を入れるのはつらい?すこし遠征になるんだが」 「え!そんな。大丈夫です。今すぐ行けますよ」 先生は笑みを讃えて私を見た。 「今すぐは行かないさ。2日後でフォーマンセル。サクラの他に俺の部下2人入るから。やっぱりお前らしくない。ゆっくりと休まなきゃな」 お前の頭が必要な任務なんだからな。とふふふと笑った。 「明日ミーティングするんだが、それまで家に帰りなさい。というか休め」 「え、でも。まだ残ってるんです」 「いいの。上官命令なの。サクラの上司に言っといてやるから」 な。ぽんぽんと頭を軽く触れる。小さく頷くのを確認すると、先生はくしゃくしゃと掻き乱して、それじゃあなと戻っていった。 自分の席に腰を降ろすと、隣後ろから野次馬が肘をつついてくる。いつのまにか眠たい眼は吹き飛んでしまった。 変わらないなあ、と思った。 まるで幼子を相手にするような接し方。いつもいつも、先生と話すたびに自分が子供に戻ったような錯覚に陥ってしまう。 それは、先生にとって私がいつまでたっても小さく頼りない子供だからで、もう変えようがないのだろう。 それが嫌で、認めて欲しくて、カカシ先生から逃げてきたはずなのに。 指先がじんじんと痛い。火照る頬は未だに冷えない。 こんな自分にほとほと嫌気が差す。会う度に実感させられて惨めになる。 でもやはりどうしようもないこの気持ちも、同じように変わることはないのだ。 (だからカカシ先生には会いたくなかったんです。) |
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