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Reine des Roses

12.硝子越し

「そういえば、陛下とイオリ殿が出会われてからそろそろ二年経ちますね」
「ああ、もうそんなになりますか」

 ふとした休憩時。たまたまイオリ殿とタイミングがあい、こうしてお茶を一緒にしながらの一言。
 陛下と過ごしていると、時間が本当に一瞬で過ぎてしまうので実感はあまりないのですが、確か暦通りならばそうなります。
「なかなか衝撃的な出会いでしたものね」
「ハハハ……」
 そう、当時城にいた人間ならば大抵の者が忘れられないであろう出来事だったのです。

 当時、騎士団隊長であったダラス・バラデュール殿が突然『武者修行の旅へ行ってまいります』と書き置きを残して消息不明になってしまい、城中が半ば呆れ半ば混乱していました。
 いえ、元々そういった面があったのは承知していたのですが、まさか本気でそうするとはとても予測できませんでしたので。
 まだ前女王ジョゼフィーヌ陛下とそのシュバリエシャルル様がご存命だったので、実害はさほどなかったのが幸いでした。しかし、まだ幼いエリザベート様には少々お辛いながらも、一人でいる時間が多くなってしまいました。
 生まれつき好奇心が人の十倍はあったエリザベート様はその時、何を考えたのか単身城を抜け出して城下町へと行ってしまわれたのです。
 私はその時、まだジョゼフィーヌ様の侍女だったものですからエリザベート様の側にはおらず、運悪くエリザベート様の侍女が目を離してしまった隙に逃げ出してしまったそうです。

 ここからは、陛下から聞き出した断片的なものなのですが。

「お城の近くにある花屋さんで、すごくかなしそうに花をえらんでいる男の人がいたの」

「あんまりにも泣きそうだったから気になって、まどガラスからこっそりのぞいてみてたの」

「なんでもお母さまが死んじゃって、おはかにそなえる花をさがしてたみたい」

「えらんでたのがくらい色の花ばっかりで、みてるコッチまでつらくなってきたから、思わず店に入って言っちゃったの」

「『そんなみすぼらしい花でお母さまが本当によろこぶとおもってるの!?』って」

「ビックリしてる彼をほっといて、とってもいい色をしてたバラを買ってあげたの」

「『お店の人もおどろいてたけど気にしちゃまけ! 花言葉なんて気にしなくてもいいの。あなたのきもちがいちばんだいじなんだから!』って言ったら、その人……すっごくステキな笑顔で『ありがとう』って言ってくれたの」

 そのあと、ご一緒にお墓参りをなさり、身寄りがないというその男の人――イオリ殿を引っ張って城に戻られました。
 そりゃあもう大騒ぎ。突然戻られたダラス卿がイオリ殿を引き取る宣言までなされて、今度こそ城中大パニックでしたね。
 異国出身で、幼少期はそちらで過ごされたというイオリ殿が、何故数年前この国にいたのか――それは私は知りません。
 でも、おかげで陛下は一人でいる寂しさから解放されたのですから、何もいうことはないと思っています。

 しかし――

「今でもバラを供えられているのですか? 陛下とともに」
「ええ。母も好きだったものですから」

 まぁ、本人がこう言っているので良いのでしょう。

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