寒いのでもふもふしたぷにちで暖かくなりたい願望による犬本田と子豹ギルの小話。
ふわふわと柔らかな毛が鼻を擽って目が覚めた。くりんとしたアーモンド形の綺麗な赤い瞳がこちらをじっと見つめている。
まだ眠いんです、もう少し寝かせてください。
小さな白い毛玉に手を乗せてそう意思表示したと言うのに、遊びたい盛りのお子様にはそれすらも遊びのようだ。
私の手に小さな両の手足でしがみ付く様にしてじゃれる白い子豹はギルベルトと名付けられた。初めて見た時はまだ目も開いておらず、ミルクを飲むとき以外はずっと寝ていたくせに、今ではもう私の安眠妨害もするほど元気に育って少々手に余る。
私の手に必死でじゃれる様は可愛らしいが、いかんせん相手は私などよりはるかに野生の血を色濃く持つ猛獣だ。
子どもと言えど爪や牙の鋭さは室内犬の私など比べるべくもない。
つまり、痛い。
今はまだ首根っこを銜えて運ぶこともできるが、その内…もう直に私よりも大きくなることなどわかりきっている。
小型犬の身が恨めしい。いや、日本基準ならば中型なのだから、これは世界基準が悪い。
遊び盛りの肉食獣様がこのまま成長してじゃれてきたらと思うと…死を覚悟した。
覚悟はしたが、死にたくはないのでまだ私でも対抗できる今のうちに躾けておくべきだろう。
白い毛玉を前足で転がしてやれば、ギルベルトはころん、と一回転。何が起きたか理解していないようできょとんとしている。まだまだですね。
ふん、と鼻を鳴らしてもう一度寝ようと瞼を閉ざす。
けれど再び寄ってきたギルベルトが今度は鼻先にじゃれてきた。なんて懲りない子だろう。きっとこの子は馬鹿に違いない。
ふわふわのお腹の毛がくすぐったくてくしゃみが出そうだ。やめてください鼻水が出てしまいます。
見た目は愛らしいくせになんてうz…コホン。
もう静かに寝かせてくださいよ、あなたさっきミルク飲んだばかりでテンション高いのはわかりますけど、そんなに暴れたらお腹痛くするんですから。お腹痛くてみゅーみゅー言うあなたの腹を延々舐め続けるお仕事は楽じゃないんです。
だからもう大人しくなさい。
じゃれついてくる白い毛玉を上から押さえつけて鼻先をべろりと舐めてやった。
顎の下の毛についたミルクが甘い。口回りを綺麗にする舐め方も教えてやらなくては。
ミルクを飲むのが下手くそなのは誰に似たんだか、頬や額にまで飛んでいる。それを丁寧に舐め取ってやれば、さっきまで元気いっぱいだったくせにもうおねむのようで くりりとしたアーモンドの目が閉ざされている。ぷすー、なんて寝息まで立ててなんて無邪気な子でしょう。お馬鹿で無邪気だなんて本当に私の手に余る。
これからの躾を考えただけで目眩がしそうです。
けれどとりあえず今はもう少し、手のかかるあなたを愛でていたい。
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