お題:Web拍手でしかしない話5題:[01] 2人だけの秘密
登場キャラ:エンペルト♂/セシル、★メタモン/レコラ、グレイシア♂/チェス
「な、内緒ですからねっ?!」
「はいはい」
軽快な返事をした目の前の者はどこかニヤけに似た笑みを浮かべていた。
刑事のはずが、なんて信頼感を失わせる表情なのだろう。
かれこれ15分ほど前の話。
朝食を5人(+αで手品師がひとり)で囲み、それを胃におさめていく。
朝からベーコンだったり目玉焼きがテーブルに並ぶ。
そこにあった危険物質という名のサラダ。
…もとい、その中に潜む・・・
トマト。
青々とした野菜に紛れて潜むトマトは、それはそれは存在が大きく見えてくるような憎たらしいほどの赤。
早い話、僕はトマトが大嫌いなのである。
無理に口に入れなくても残せばそれで良い。
ただ、皿にトマトだけを残してみよう。当然、僕がトマト嫌いなのがバレる。
17にもなる男が、トマトにすら勝てないなんて情けない。そう思ってしまう僕の変なプライド。
そこで考えたのが、よくあるあの作戦である。
氷雨さんが未だ目が覚めきれず、手で両目を擦った瞬間に彼女の皿にトマトをそっと置く。
もうろうとした意識、彼女の持ち前の食欲で疑われることなく、憎きトマトは氷雨さんの胃の中へ。
単純にしてごくありふれた作戦だが、これがなかなかバレない。
…だが、この日だけは違っていた。
「セシるん~。」
「あ、レコラさん。」
早速検証のために、事件現場へと向かおうとした時だった。帽子から覗く伏し目が何かを語ろうとしている。
不意に自分の耳元にレコラさんの顔が近づいてきた。
「今日は暑くなるよ?体を冷やすような物食べた方が良かったんじゃない?
…トマトとかねぇ、いやぁ実に勿体無い。」
「!」
やられた。さすが組織内で最も行動(と空気)が読めないと言われるだけある。
「な、内緒ですからねっ?!」
「はいはい」
僕はその場から逃げるように現場へと向かうようにした。
トマトを無理矢理食べさせられるなんて展開も考えられる。
バタン。
玄関の扉が閉まる。その空間に残ったのは、ペテン師のような刑事だけ。
「セシル、現場に向かったのか?」
清掃員になりすました男―チェスの声が後ろから聞こえる。
「行ったよ~大分慌ててた。」
ケラケラと笑いながら、チェスがいる方へと顔を向ける。
見ればチェスもニヤニヤに近い笑みを浮かべているではないか。
「そりゃあ、お前がトマトの話をしたからだろ?全く、セシルが可哀相じゃないか。」
「やー今まで黙ってたけど、いい加減痺れをきかせちゃったよね。あはは。」
「何事もないように本人なりに振舞ってたけど、面白いくらいバレバレだったしな。
珍しく有森警部も笑いを一生懸命こらえてたし。」
セシルとレコラの「2人の秘密」は大分前から「皆の笑いの種」となっていたとさ。
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