「ただいま」
「おかえりなさい」


弟の一護が社会人生活を初めて、もう3ヶ月目に突入しようとしている。
段々と任される仕事が増えてきたんだろう、残業をするからか、帰りが遅くなる日も出てきた。


帰宅をすればキッチンに顔を出しお弁当箱を置いて、2階に上がる。
着なれてきたスーツを脱いで部屋着に着替えると、再度キッチンに戻ってくる。
というのが一護の帰宅後の行動だ。
けれど今日はなぜか、着替えに部屋に行く様子はない。


「一護?」
「姉ちゃんに、」


そうぶっきらぼうな物言いで差し出されたのは、白い箱だった。
印字されているのは、おいしいと有名な近所のケーキ屋さんの名前で。


「毎日弁当、さんきゅ」


箱を受け取ると、一護はそう言った。
一瞬何がなんだかわからなかったけれど。


「…、ありがとう」


あんなに小さかった弟が。
お母さんが亡くなって、ずっと見てきた弟が、こんな。


「お姉ちゃんは嬉しいよ」


着替えてくる、と言って一護は部屋に戻って、その言葉を聞くことはなかったけれど。
心底嬉しいと、思った。





ありがとう、一護。





「姉ちゃん腹へった」
「はいはい。今日の晩ご飯はハンバーグだよ」



だからあたしも。
これからも気持ちをたくさんこめて、ご飯を作ろうと思った。




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あおいながれ









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