その夜、空は漆黒の闇の中、紅い月が煌々と輝いていた。

相麻有珠は、まるで何かにひきつけられたかのように部屋の窓を開け、その月を見た。

「綺麗・・・・」

呟いたのはきっと、無意識のうち。次の瞬間、彼女の目の前に男がいた。整った顔の、妖艶な雰囲気を持つ男。

「いったい、誰―――」

問いかけようとした言葉は、最後まで紡がれることはなく。有珠はその男を認識すると同時に意識を失っていた。

男は静かに呟いた。―――アリス、ようやく見つけた。




Novelページ長編
-Vampir- 第1話 紺碧い夜と深紅い月より抜粋






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