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拍手ありがとうございます! ↓お礼文になります。 見慣れない生物が居た。 人魚の少女はは、まだ子供と思しきその生物をじっと見つめている。 水面から顔を出したところ、ちょうど目の前にその生物が居たのだ。 見慣れぬその容貌に少女は目を奪われていた。 時折、その兎にも似た長い耳をぴくぴくと動かしながら、きょろきょろと周囲を見回している。どうやら、誰かを探しているらしい。 その姿はあまりにも無防備で、人魚の少女に僅かばかりの悪戯心を芽生えさせた。 慎重に、そっと、本当に少しだけだからと己に言い聞かせて、その時折動く長い耳へ、そろりと手を伸ばす。 徐々に高鳴る心を抑えながら、身を乗り出したとき ぱしゃり 水面が揺れた。 ビクっと体を震わせ、ピンク色の生物が人魚の少女に気が付く。 心が高揚したために、尾鰭が無意識に水面を打ってしまったのだ。 いきなりの出来事にその生物は状況を把握出来ずに居るようで、きょとんとした目で少女を見つめている。 少女自身も、その行き場を失った手を伸ばしたまま固まってしまっていた。 お互いに見つめあったまま、桃色の人魚と翼竜の子の間に暫しの時が流れる。 最初に動いたのは翼竜の子だった。 まず少女を見、次にその固まったまま宙に浮いている手を見て、 「ぴゃ!」 嬉しそうな声を挙げ、その手に擦り寄ってきた。 「!!」 思わぬ行動に少女は驚きの表情を浮かべる。 しかし、甘えるような、遊び相手を見つけた人間の子供のような表情で己に手に擦り寄ってくる翼竜の子に、その驚きも掻き消されていった。 今度は自ら、そっと尾鰭で水面を叩く。 先程と同じ音に、びくりと体を震わせ、その翼竜の子供はきょときょとと周りを警戒する。 少女は、ちょんとその子の尾を指先で触り、己の尾と同じものだと指し示してみせる。 そして、相手が見ている目の前でもう一度尾鰭で水面を叩く。その様子をじっと見つめ、先程少女がしたように、己の尾と少女の尾を交互に見やり、ようやく音の招待を突き止めたばかりに、その小さな羽根をぱたぱたと動かしている喜んでいるようだった。 その姿がとても可愛らしくて、少女はその小さな頭をそっと、優しく撫でる。 今、この瞬間、人魚の少女と翼竜の子供は、お互い新しい友人を得たのだった。 「そこにいたのか」 声のした方を少女が振り返ると、最近教会へ来たばかりの司教見習いの少年が居た。 少年は少女の手に気持ち良さそうに擦り寄っている翼竜の子に視線を落とす。 「ブルピャと遊んでくれていたのか。ありがとう、ラゼット」 そう言って、嬉しそうに、本当に嬉しそうに微笑んだ。 それにラゼットも笑顔で返答する。 己の主人の姿に気が付き、先程まで手の中に居た温もりが離れていく。 少しばかりの寂しさが少女の心に落ちる。 少年にじゃれつくその姿は、自分では入っていけない何かが、その間にはあることを見せられている気がして、胸が締め付けられた。 それが初めて芽生えた嫉妬という感情だと少女が気が付くのは、まだこれからのお話。 【桃色同盟】
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