何の罰ゲームだ。 この俺が女装しなければならないなんて。 「散々似合わないって笑っただろうが!なぁ留子さん!!」 「るっせぇぞ!とっとと走れよ文子さん!」 「もういいじゃない・・・君らに巻き込まれた僕らに比べたらさ・・・」 「私は似合うから別だが、巻き込まれたことに関してはその通りだな」 「・・・俺は・・・嫌だ・・・」 「あっはっは!もういいじゃん、いっくぞー!いっけいけどんどーん!」 ぎゃーぎゃー言いながら裏々山を全力疾走する、女装姿の6年生。 すね毛がどうとか、大胸筋がどうとか。 全く以って色気のない会話を繰り広げる(自称)女性たち。 何ゆえこの様なことになってしまったかというと。 学園長の突然の思いつき運動会 『4年生&5年生vs6年生~負けたら1日休みをあげちゃうゾ~』での競技に、 女装しながら裏々山のふもとの町での借り物競争 が組み込まれていたからだった。 (正直、休みなんざでもいいんだよ!負けるのが気にくわねぇだけだ!) 文次郎がイライラしらながら全力疾走しているのは、 女装をしているから、という単純な理由だけではなかった。 学園町いわく―― 「裏々山のふもとの町には、1年は組の良い子達を向かわせておる。 きり丸にも、好きにアルバイトしておけと言っておいたからの。 今頃、女装しながらところてん売りでもしておるだろう」 団蔵、庄左ヱ門、兵太夫を引き連れて。 そんなわけで、4,5,6年の上級生は、 よくわからないながらも女装をしながら裏々山まで女装しながら全力疾走に取り組んでいるのであった。 「団蔵がよくわからんヤローにナンパされるだろうがぁあああ!」 「もんじ・・・何言ってるの・・・?」 「そんなこと思うのはお前だけだ。それよりは明らかにきり丸だろう」 「いさっくん、もんじに聞くだけムダだろー!俺は滝夜叉丸に負けたくないから先行くぞ!」 「・・・図書委員として・・・見過ごせん・・・」 ダダダダとすごい勢いで走っていく文次郎、小平太、長次。 その3人の背中を見ながら、残された仙蔵、伊作、留三郎はため息をついた。 「あんなに周りが見えないんじゃあ、4,5年のやつらに足元掬われるかも知れねぇなぁ・・・」 「余裕だねぇ、田村は君の事を知り尽くしてるんじゃないの」 「お前こそ足元掬われるんじゃないのか」 「るっせ!そんなヘマするかよ!テメェは自分の後輩の落とし穴だけ見分けておけよ!」 「綾部のはな・・・もう、地面に足を付けないで樹の上だけ走ればいいと思っているが?」 「なんだよその気弱っぷり!」 「そうだよ、そんなの無理ッ!?ってうわあああ!!」 「「伊作・・・・」」 終わっとけ☆ もんじはエライ形相で団蔵のとこにたどり着くので、 ものすごい勢いで逃げられればいいと思います。 |
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