「……なんで冬にアイスを食うかな」
 こたつに入ってカップのアイスクリームを食べている近藤と沖田のすがたを見て、土方はおもわずぼやかずにはいられなかった。
「なに言ってんだ、トシ。こたつに入ってアイスを食う。これぞ冬の醍醐味じゃないか!」
「近藤さんが隊士のみんなにってお土産で買ってきてくれたんでさァ。みんな喜んで食ってましたよ」
「ああ、ちゃんとトシの分もあるからな」
「あ、土方さんの分は俺がちゃんと食っておきやした」
「えええ総悟なにしてンの!?」
 よく見たら沖田のアイスのカップはふたつ重ねられていた。空っぽのカップを土方に見せつけるようにして持ち上げた沖田は、「ごちそうさまでした」と近藤に言い残して部屋をでていった。土方はべつにいらねェよとその背中に舌打ちすると、こたつのなかに入りこんだ。そこでうつむき加減になっている近藤に気づいた。
「近藤さん?」
「すまん、トシ……」
「いいよ、べつに」
 そんなに落ちこまなくても、と土方は苦笑する。べつにアンタのせいじゃないよ、ぜんぶあいつが悪いンだ。アイスが惜しいわけではないが、近藤の土産を食われてしまったのは悔しい。くそ、腹こわして一生厠からでてくんな。だんだん腹がたってきて眉間にしわを寄せる土方のまえに、そっとアイスカップが近づいてきた。
「トシ、俺の分食うか?」
 問いかけに、俺のことは気にするなと言いかけた土方は、やめた。
「……もらう」
 うなずくと、差しだされたスプーンを見向きもせず、ぐいと身を乗りだして近藤のくちびるに吸いついた。ひんやりとしたくちびるだ。いつもの身が焦がれるような熱いくちびるではなかった。
 あまい味を追うように、舌先を奥のほうに押しこもうとしたとき、カシャン、と金属のぶつかる音がした。土方は惜しむようにゆっくりと近藤からはなれ、音のしたほうへ視線を送った。顔を真っ赤にさせた近藤が、硬直させた手もとからスプーンを落としたのだった。
「ト、トシ!」
「だって、アンタがくれるって言ったんだろ」
「いや、俺はアイスを」
 あわてたふうに言う近藤のくちびるに、土方はもう一度、今度は軽くキスをした。先ほどよりも、温度がもどっているようだった。
「近藤さん、もっとほしいな」
 アイスクリームが溶けだすほどの熱い愛を。



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温度が絡む5題/01:冷たい唇




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