束縛の自由
 【歌仙兼定×宗三左文字】★★



  

 ある秋の夕刻、城門のすぐ内側で。
 出陣部隊が新たな刀剣男士を連れ帰って来たとて、近侍の歌仙兼定の隣で、宗三左文字は新参者の挨拶を受けた。
 白い洋装束に身を固め、黒い手袋を嵌めて顔には眼鏡をかけているその男は、亀甲貞宗と名乗った。主の城には久しぶりの、新たな打刀であった。
「よろしく」
 歌仙兼定よりも人懐こい笑みで亀甲貞宗は宗三左文字を見つめ、一、二度瞬きをした後、突然何かを察知したように宗三左文字に向けて口を開いた。
「おや。きみは僕と同じで、束縛を好むタイプなんだね?」
「………………? …は……?」
 今度は宗三左文字が瞬きをする番だった。
「きみも縛られていないと駄目なんだろう? その気持ち、よくわかるよ」
 亀甲貞宗はひとりでうんうんと頷く。
「……………………?」
 言われたことが全く理解できず、宗三左文字は何の反応も示せない。
 歌仙兼定が眉を顰め、脇から足を踏み出してふたりの間に割って入った。
「出逢ったばかりでいきなり人判じとは感心しないな。生半な判断は誤謬を生む。きみは少し口を慎んだほうがいい」
 歌仙兼定が冷たい声で亀甲貞宗を牽制した。恋人が不機嫌になった理由が掴めずに戸惑いながら、宗三左文字は黙したままで歌仙兼定を見る。
 言われた亀甲貞宗のほうは今度は歌仙兼定を凝視して、得心したというように顎を後ろへ逸らした。
「………ああ。きみが束縛する側なのか。ふうん……お似合いだね」
「………………」
 今度は歌仙兼定が無言になった。
 歌仙兼定は亀甲貞宗の言葉の意味がよく掴めているらしく、亀甲貞宗の顔を文字通り睨みつけていた。不機嫌を通り越し、そろそろ怒りに近い気配が歌仙兼定の肩に漂っている。
 はらはらと二人を見る宗三左文字の前で、亀甲貞宗は柔和に微笑んだまま言葉を続けた。
「僕の場合は、拘束してほしいのはご主人様限定なのさ。嗜好が同じでも、きみたちが恋敵にならないと知って安心したよ。お互い愛を得る為に頑張ろうじゃないか」
 全く話が見えない宗三左文字の脇で、やや呆れたように歌仙兼定が口を開いた。
「数多の刀剣男士が集っているこの城で、今更のように顕現したのに、きみは、今後抜きん出て主の寵を受けられるつもりでいるのか……?」
 今度の歌仙兼定の言葉の意味は、宗三左文字にも理解できた。
 主の寵愛第一の刀は常に、近侍を務める歌仙兼定だった。燭台切光忠や江雪左文字などと並んで、宗三左文字自身も、主から寵を得ていると思える程度には、城内で重く扱われている刀ではあった。
 歌仙兼定の問いに亀甲貞宗は「そうとも」と即答する。
「大事なご主人様に束縛されて瞬間瞬間を生きる。戦場では、鐔を割り鎬を削ってご主人様の為に尽くし、刃こぼれの都度研ぎを受けて身を細らせ、やがては火の中に滅んでいく。刀ってそういうものじゃないか。ともかくだね。ご主人様を思う気持ちは、全ての刀剣男士の中で、僕が一番の筈なのさ」
「………随分な自信だな」
 目の前の打刀は今まであまり城にはいなかった類の性格をしている、と歌仙兼定は思った。怒りより呆れを強めた歌仙兼定の感情に構うことなく、亀甲貞宗は左手指で眼鏡の中央を押して位置を整えると、人懐こいと言うよりは粘着度を高めた視線で虚空を眺め、微笑みながらうっとりと語り出した。
「ご主人様に触れてもらうのがずっと夢だったんだ。刀剣男士の姿で顕現したからには、これ以上の望みは無いだろう? 僕を縛る縄紐の端をご主人様が握ってくれれば、いや、握ってくれると想像するだけで、僕は高まってきてしまうんだ。一番いいのは服の下の縄先を握ってもらうことだけれど、ご主人様の前で脱ぐのはちょっと恥ずかしいかな。僕はけっこう奥ゆかしい性格で、ご主人様の前であまり自分の趣味をさらけ出して疎まれるのは避けたいから、自分で自分を縛っているのはご主人様には秘密だけど……でも眼鏡の弦についた紐でもいい、鞘の下げ緒でもいい、ネクタイでも、ベルトでも何でもいい。僕を拘束するものをご主人様が掴んでくれたら、それだけできっと僕は高まりすぎて昇天してしまうよ、間違いない。僕のご主人様への思いは、それだけ深くて強いんだからね。ああ、刀剣男士に生まれてきて良かったなあ。肉体を得てから、僕はずっと高まりっぱなしだよ………!」
 頬を桃色に染めて陶然と語り尽くす亀甲貞宗に圧倒され、古株二人は呆然と彼を見つめる。
 宗三左文字には全く理解できない話の内容だったが、歌仙兼定は違ったらしい。途中まで亀甲貞宗の文意を汲もうと目を眇めていた歌仙兼定の肩が動揺したように揺らいで、首が後ろに引けた。
「……………き…」
 宗三左文字の目の前で、歌仙兼定は耳を赤らめながらも顔の中央をひどく青ざめさせていた。亀甲貞宗に対して、珍しいことに、歌仙兼定は恐怖に近い感情を抱いたようだった。
「……きさま………! ……変態趣味のきさまと、僕や宗三左文字どのを一緒くたにするんじゃない……!」
 歯の間から、ようやく絞り出すように声を放った歌仙兼定に亀甲貞宗は視線を戻して、あっけらかんと笑って見せた。
「まあまあ。拘束趣味どうし仲良くしようじゃないか」
「……だから、一緒にするなと言うんだ! ひどい侮辱だ、風流でないどころの話じゃないぞ、この無礼者! 僕はきさまのような意味で宗三左文字どのを束縛したことは一度もない!」
 遂に激昂して歌仙兼定は怒鳴った。それは怯えから来る逆切れのようにも見えた。
 六角形の硝子を嵌め込んだ眼鏡の奥で、亀甲貞宗が目を見開く。
「えぇ、そうなのかい? 精神拘束だけ? それはきみ、人生をものすごく損してるよ。何なら僕の縄紐を貸そうか? 物理的な拘束は高まりが違うよ? 具体的に何処を縛ったら何が高まるかと言うとだね………、」
「……宗三左文字どの!」
 尚も言い募ろうとした亀甲貞宗を遮るように、顔色を変え彼を睨んだままで歌仙兼定が声を張り上げた。
「もう行こう。自己紹介は充分だ! これ以上この男と口を利く必要はない……穢れが感染る!!」
 歌仙兼定はくるりと亀甲貞宗に背を向け、有無を言わせぬ勢いで宗三左文字の肩を掴んで、彼を亀甲貞宗から引き離しずんずんと歩いていく。
 宗三左文字には訳がわからない。
「……か、歌仙兼定、」
 礼儀も何もかなぐり捨てた行為を歌仙兼定が取るのはごく珍しく、それに対しても宗三左文字は戸惑うばかりであったが、それでも歩調は恋人に合わせて、亀甲貞宗が立つ城門から歌仙兼定と共に遠離っていく。
「……いいんですか? 亀甲貞宗に挨拶もせずに……」
 宗三左文字が尋ねたが、歌仙兼定は返事をしない。
 宗三左文字が肩越しに振り返って亀甲貞宗のほうに視線を投げると、白い背広姿の刀剣男士は機嫌を損ねることもなく、柔やかに二人に手を振ってきていた。
「お互い頑張って、好きな相手を縛ったり縛られたりして気持ちよく高まろうね!」
 夕方の風に乗って亀甲貞宗の声が耳に届いてくる。
 振り向きさえしない歌仙兼定の、宗三左文字の肩を掴む手がひくりと震えて、改めて宗三左文字を力強く掴み直した。


 秋の日没は早く、夜気は急速に冷えていく。
 襖は閉ざしてあるが、庭の借景となっている山の端には夕月夜が顔を出していた。
 歌仙兼定の居室で、宗三左文字は部屋の主を前に客座に座している。
 歌仙兼定は亀甲貞宗との会話で相当な衝撃を受けて打ちのめされたらしく、畳の上に座り込んで両手で顔を覆うようにして頭を抱えていた。
 歌仙兼定と宗三左文字の前には酒が用意されているが、自らそれを手配した歌仙兼定が杯に手をつける気配も無い。
「何ということだ………主が長らく求めていた、幸運を呼ぶ貞宗派の打刀があんな俗物だったとは。あんな奴が僕たちと同じ刀剣男士だなんて、認めたくもない。主は本気であいつを部隊に組み込むつもりなんだろうか。昔、にっかり青江が顕現して本丸の品位を危うくしたことがあったが、亀甲貞宗ときたらにっかり青江の百倍は酷い。変態趣味な上に品性がああも劣俗ときては………雅じゃない。僕が築いてきたこの城の品格が喪われてしまう」
 歌仙兼定にしては珍しく、愚痴めいたものを口からえんえんと吐き続けている。
 主のもとに初期刀として顕現してから殆ど全ての時を近侍として過ごしてきた歌仙兼定は、もはや城代と呼べるほどにこの城の運営を主から任されている。そんな彼にとって、亀甲貞宗は、容易には受け入れがたいほどの難人物であるらしかった。
「歌仙兼定……」
 恋人の動揺ぶりが気の毒で宗三左文字は声をかける。
「亀甲貞宗に対しては、あまり気に病まないほうがよろしいのではないですか。我々がどう思おうと、彼の境遇を決めるのは主の気持ち一つですし。あなたが彼に言ったように、出逢ったばかりで生半な判断を下さなくても良いのでは、と思いますけれど」
 手で顔を覆ったままの歌仙兼定が、指の間から宗三左文字に視線を寄越してきた。
「…………きみは、彼の繰り言の意味がわかったのかい」
 歌仙兼定の言葉には、弱々しくとも宗三左文字を詰るような気配さえこもっていた。
 宗三左文字は居心地が悪くなって居住まいを正す。
「……正直に申せば、僕には、亀甲貞宗の言葉は半分ほども理解できませんでした」
 頬が紅潮するのを自覚しながら宗三左文字は答えた。
「ただ、その……亀甲貞宗が言った『刀が主に縛られる』というのは、まさしくそうだと思いますけれど。僕たち刀は、所有者の道具に過ぎませんから」
 歌仙兼定に見つめられて心臓の音が大きく重くなる。その心臓の上に、魔王の所有の証である刻印が打たれている。宗三左文字は知らず、刻印の位置に右掌を当てていた。
「僕は自分では我が身の自由を望んでいますから…………この僕のことを、束縛を好むと評した亀甲貞宗のその言葉の部分は、間違っているとは感じますが」
「………………」
 歌仙兼定は手を下ろして顔を上げ、宗三左文字を緑の目で見つめた。やがてその顔がようやく緩み、吐息とともに笑みに似たものが口に上る。
「……きみの言葉を聞くと安心する。亀甲貞宗の戯言は、底なしの淵の際に立たされるような、酷い心地にさせられるものだったからね」
 世情に疎い宗三左文字は亀甲貞宗の言葉の真意を全く理解できていない。その無垢な高雅さが、今は却って歌仙兼定の心を慰めた。
 気を取り直し、自分の杯を手にとって酒を飲みながら、歌仙兼定は再び新たな刀剣男士のことを詰り出す。
「品位あるきみと変態嗜好の亀甲貞宗を、奴自身が同類に並べ評したのはまったく度しがたい。あれだけで奴は万死に値するよ。しかも僕に拘束趣味があるなどと言ってきて………」
「あなたは僕を縛りたいんですか?」
「ぶッ」
 唐突に宗三左文字に尋ねられ、歌仙兼定は口の中の酒ごと息を吐き出した。
「ッ、」
 暫くは咽せ込んで、歌仙兼定は返事も出来ない。
「大丈夫ですか、歌仙兼定」
 ごほごほと咳き込む歌仙兼定の広い背をさすりながら、宗三左文字が恋人の顔を覗き込んできた。
「っ、いや……だいじょうぶ、だから、」
 脳裡に浮かんだ妄想を必死で打ち消しながら歌仙兼定は咳を押さえ込む。亀甲貞宗の言う『拘束』を宗三左文字に為すことなど絶対に無いし、その様を想像する余地すら自分に持たせるつもりは無い。今一瞬瞼の裏に浮かんだ淡紅色の絵面は断じて存在しなかった。気のせいだ。
「歌仙兼定」
 亀甲貞宗の言葉の真意など全く知らず、故に歌仙兼定の動揺の意味など取りようもなく。
 宗三左文字が淡紅色の髪を揺らがせて歌仙兼定の顔にその白い面を近づける。性的な意図はなく、ただ純粋に、歌仙兼定を案じての行動だった。
「……宗三左文字どの」
 宗三左文字の白い頬にかかる淡い紅色の髪を指に絡ませて、ようやく落ち着いてきた歌仙兼定は恋人の名を呼んだ。
「きみは……刀が主に縛られるように、きみが僕に縛られていると、そう思うことがあるのかい……?」
 唇は微笑んでいるが目に宿る光は真摯だった。
 それは歌仙兼定にとって、薄氷を踏むような心地になる問いだった。
 亀甲貞宗に言われてすぐに自らの疚しさを自覚した。一方的な負い目が相手の言葉を見誤らせる結果になって、無駄な時間を割いて亀甲貞宗の相手をする羽目になってしまった。
「………どうでしょうか……」
 自分のことを問われているのに、宗三左文字は覚束なげに歌仙兼定を見返してくる。
「僕があなたに縛られているのか、どうか、僕にはよくわかりません」
「………心当たりはない、ということかい………?」
 宗三左文字の僧衣に広がる一房の長い髪を指で弄び、それに口づけながら歌仙兼定は重ねて問う。
「………あなたは」
 歌仙兼定の顔にかかる宗三左文字の吐息は熱い。緑と青の色違いの瞳をこちらに向けて、長い睫毛に縁取られた優しい目尻の周囲は赤く染まっていた。
「僕が薬研藤四郎やへし切長谷部と話すと、機嫌が悪くなります。………彼らに冷たく当たることも」
「………………」
 歌仙兼定は押し黙る。
「加州清光やその友人の大和守安定、にっかり青江と僕が話していても、嫌な顔をなさいますね」
「………それは、彼らが僕の留守に、きみの屋敷に上がり込んで、きみの為に僕が用意させた茶菓子をすっかり攫っていってしまうからだよ。加州清光やにっかり青江は、特に、きみによくない影響を与えかねないし」
 心が守勢に回るのを感じ、黙っていることも出来なくなって歌仙兼定は言い訳した。
 甘え上手で恋多き打刀として名を馳せる加州清光や、もっと即物的な意味で浮き名を流すにっかり青江は、歌仙兼定が宗三左文字に最も近づけたくない相手だった。薬研藤四郎やへし切長谷部など、織田佩刀時代の宗三左文字を知っていてそのことをよく話題に持ち出す連中も、確かに歌仙兼定がひどく嫉視している相手ではあった。
「あなたは僕に何くれと世話を焼いてくださいますし、それには感謝しているのですが……、あなたが一方的に僕にとって危険と判断した戦場には出陣させてくれませんし、そうでない場合でも、他にもっと経験の足りない刀剣男士がいるときに、有無を言わさず最上級の刀装と馬を僕に装備するよう求めてきて譲りません。……僕には、あなたが僕に対して、過剰な心配を常になさっているのではないかと思います。それを……少し、窮屈に感じることはあります」
 宗三左文字は瞬きをして、その細い体を歌仙兼定に押しつけるようにして寄り添う。歌仙兼定が手を伸ばしてその身を抱き籠めると、宗三左文字も、僧衣ごと腕を歌仙兼定の胴に回してきた。
「……僕はきみへの態度を改めるべきかな」
 ―――それが出来るかどうかは別としても。
 独り言のように漏らした歌仙兼定の言葉に、宗三左文字は吐息をついた。
「………いいえ」
 宗三左文字が水鳥のように優美に首を傾けて、頭を歌仙兼定の肩に預けてくる。
「悪いことも良いことも表裏一体です。……僕は、あなたの腕の中にいることが心地いいので……」
 くす、と歌仙兼定に見えないところで宗三左文字が微笑んだ気配があった。歌仙兼定の首にかかる宗三左文字の息はさらに熱を高めていて、抱きかかえた体の熱さから、歌仙兼定は宗三左文字が、自分の気づかぬ間にもてなしの酒を随分飲んでしまっていることに気がついた。
「……きみは少し酔っているね」
 歌仙兼定から見える宗三左文字のうなじが、淡紅色の髪と同じほどに赤く染まっている。
「………そうですか……?」
 自覚なげに宗三左文字は呟いて、首を起こし、頭をこちらに振り向けて歌仙兼定を見つめてきた。酔いに潤んだ色違いの瞳に、珍しくもやや悪戯っぽい光と、そして情欲が湛えられていた。
 宗三左文字の熱い唇が近づいてきて歌仙兼定の口を食む。それに応えている間に、宗三左文字の柔らかな体が歌仙兼定の下肢を跨ぐように乗り上がってきて、宗三左文字は歌仙兼定の腿の上に馬乗りになった。
「ン……ん、」
 満足げに鼻から息を吐きながら、宗三左文字が歌仙兼定の舌に己の舌を絡めてくる。
「ぁふ……っ、ン…」
 宗三左文字に口中から唾液を吸われて、歌仙兼定の体内にも熱が凝ってくる。
 歌仙兼定の頬に纏わりつく二藍色の癖っ毛を指で撫でつけていた宗三左文字の手が、優美に歌仙兼定の着物を肩から胸へ撫で下ろし、袴の腰紐に到達して、結び目を解き始める。
「……夕餉もまだなのに、僕を襲うつもりかな………?」
 宗三左文字の行為に内心で驚きを感じながらも、それを歓迎する心地になっている自分を認めつつ歌仙兼定は冗談を言った。
 歌仙兼定の顔のすぐ傍で、宗三左文字が微笑む。
「酒をいただいたら、体熱が上がってしまって……体が火照って、ひどく熱いのです」
 言ううちに宗三左文字の手は歌仙兼定の袴を解いて腰をくつろげ、内着の紐さえ解き始めた。
 歌仙兼定はそれに応えるように、宗三左文字の袴のうちへ手を差し入れて、太腿の滑らかな素肌を器用な手で撫で上げた。
「っ…は………、」
 歌仙兼定の手が宗三左文字の臀部に至り、するりと撫でられて、宗三左文字がぴくりと震える。
 歌仙兼定の前で、宗三左文字は自ら服の裾を大きく絡げ、下肢の全てを恋人の目に晒した。自らの手で解いた肌着の下から、勃ちかけた宗三左文字自身が頭を擡げている。
「このまま……酒の肴に、あなたをいただいてもいいですか………?」
 顔を赤らめて淫らな行為を言いかけているのに、宗三左文字のその言い様は相変わらず高雅だった。
「きみはやっぱり、酒に酔っているな」
 淫靡な宗三左文字の様子に、体の中央に熱が溜まり、自分も勃起が始まっているのを自覚して息を喘がせながら、歌仙兼定は笑って宗三左文字を見上げた。
 宗三左文字の手は、既に歌仙兼定の雄さえ肌着のうちから引っ張り出し、すっかり屹立したそれを指で扱きながら、己の臀部を揺らがせて竿先に尻を擦りつけている。
「ン…ぁ、は……、酔っているのは、あなたにですよ、歌仙兼定」
 酒に理性がほどけた宗三左文字の喉から、歌仙兼定を嬉しがらせる言葉が与えられて、歌仙兼定は頬を紅潮させて潤んだ緑色の目を見開く。
「あなたの腕の中にいるときに……僕は最も自由を感じるのです。……もう、空を見ても、そこに舞う鳥に憧れたりは……いたしません」
「……宗三左文字どの」
 幸福に満たされて歌仙兼定が思わず宗三左文字の腰を強く抱き締めると、宗三左文字が「ふふ」と嬉しげに笑った。
「僕はあなたのもので、あなたは僕のもので………確かに亀甲貞宗は、生半な判断で誤謬を生んだようですね………ン、あぁっ…、」
 宗三左文字の語尾が甘く掠れたのは、宗三左文字が腰を落として、歌仙兼定の雄を自らの裡に潜らせて飲み込んだからであった。
「ッ…く……、」
 竿を深く飲み込まれ、宗三左文字の粘膜に優しく締め上げられて、その熱さと狭さに歌仙兼定が堪えるように歯を食いしばった。その顔を見下ろして、酒と恋人の二つに酔った宗三左文字が、淡紅色の髪を揺らめかせて笑う。
「僕だって……、あなたを縛ってますからね………こうして…、ッ、は、ンあっ…」
 優しく腰を揺らして熱と快楽を歌仙兼定に伝えながら宗三左文字が言った。
 居室で着衣のまま座して、騎乗位の宗三左文字が歌仙兼定を甘く煽ってくる。
「っ、ぁッ、ンぁ、っはッ…」
 宗三左文字の両手が歌仙兼定の二藍の髪に絡んで優しく頭を撫でられて、汗の湧き始めた額に時折接吻を受け、下肢は快楽に飲まれて、やがて歌仙兼定は、酔ってとは言え宗三左文字の誘惑は、宗三左文字が落ち込んでいた自分を慰める為であったことに気がついた。
「ッ…は……ああ…、いいよ、宗三左文字どの」
 性の愉悦とそれ以上に、泣きたいほどの多幸感に襲われて歌仙兼定は頬を薔薇色に染めて微笑し、服を着たままの宗三左文字の細い胴を、自分の傍に引き寄せた。
「きみのやり方で、もっと。僕を縛ってくれ」
 自らも宗三左文字の動きに合わせて腰を揺らめかせながら、歌仙兼定は言った。
「きみになら、いくらでも束縛されるよ。僕もそれを望んでるんだ……、宗三左文字どの」

                                          (了)













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