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腕の中にある体温に、安心する。
触れられることに、ほっと息を吐く。

安心して、そのせいでよけいに堪えられなくなったのかより力を込めようとする腕に、必死で自重しろと言い聞かせた。この2本の腕は僕自身のパーツのはずなのに、たまに勝手に動こうとする。力の限り、抱きしめようとする。
そうやって、ずっと開いていたふたりの距離を縮めようとしているのかもしれない。ほんの少しでも隙間があることが、嫌なのかもしれない。

でも、それも不思議だ。今、この腕の中に閉じこめている存在──グリーンから離れていたのは、他でもない僕なわけで。
僕自身がそう決めて、数ヶ月とはいえ旅を経て帰ってきたのに、どうしてこんな風に置いていかれた気分を味わっているんだろう? しかも、こうやって帰ってきた今になって。

なんで、ここにグリーンを置いていけたのかがわからない。
帰ってきてからこうやって顔を見るなり、指先からあふれそうなほど感情が暴れ出してるのに。

「おいおい、待てって。いてえよ。おまえ、俺の肋骨折るつもりじゃねーだろーな」

すぐ耳元から聞こえてきた声には、呆れが多分に含まれていた。グリーンは、それを隠そうともしない。
だけど、その手はゆっくりと柔らかい動きで僕の髪をかき分けて、優しく地肌を撫でる。
口調や口にした言葉とは裏腹の、慈しむような仕草。
おかげで、僕はますます自制を意識しなきゃいけなくなった。もうぎりぎりまで我慢してるのに、ものすごく理不尽だ。

「まさか」

細心の注意を払って、抱きしめる力を強くする。
苦しくないように。呼吸を妨げることがないように。
そうすれば、グリーンは小さく笑って僕の頭を抱き寄せてくれた。髪に、グリーンの唇がそっと触れる。
それが、こんなにも嬉しい。

「そんなもったいないこと、しないよ」

たとえ、本当にグリーンの骨を折ったとしても。
それ以外の何をしたとしても、どうせグリーンが僕だけのものになることはない。他の誰の目にも触れがいようにとか、そんなことはできるはずもない。
でも、グリーンはこうやって僕のことを見ていてくれる。腕の中に閉じこめたとしても、逃げようとはしない。こうやって、優しく受け入れてくれる。

それならば、五体満足で笑っていてくれたほうがいい。
グリーンが幸せでいてくれるなら、僕もきっと幸せでいられる。その笑顔を見るだけで、何物にも代え難い宝物を得た気分になれる。
だから、それでいい。それ以上は望まない。

──たとえ、僕が立っている足場が、いつ切れてもおかしくないたった1本の細い糸で作られたものだったとしても。


*pkmnレグリレ、レ→グリ風味
*グリーンが好きすぎてちょっと壊れてるレッドとか、じつは好きです



*拍手お礼1/3



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