「愛があれば食べられるでしょ?」「ないから無理」



さあやってきましたバレンタイン。
と、ばかりにこの島の人たちも心なしか浮き足立っている。
年頃の彼、彼女は勿論、小さい子からお年寄りまで、想いを寄せる相手に気持ちのこもったチョコを贈る。
こんな素晴らしい行事はない!と、思うのに。
若いはずなのに、しみったれた顔をしているのが一人。
そして、その一人が意中の相手であるあたしは、本当に困ったものだ。

「だいたい、バレンタインってお祝いする日じゃないだろ?」
「いや、そうなんだけどさ」
「みんな少しは自粛して、司教様にお祈りしに教会へでも行ったらどうなんだ」
「…チハヤさ、なんでそんなバレンタイン嫌いなの?」

もしかしてもらえないから、と続けようとして止めた。
何故なら彼の部屋にはすでに何個か、チョコだと思われるラッピングの箱や袋が置いてあるからだ。

「…いいね、君は呑気で」
「な、あたしだって呑気じゃいられないよ?」
「なんで?」
「なんでって…」
「まさか君も誰かにチョコを贈るとか言うの?」
「…そのまさかだよ」
「…可哀想に」
「チハヤなんだけど」
「…え?」
「チハヤにあげようと思ってきたの!」
「君は僕を殺す気?」

確かに。
確かに私は殺人級に料理が下手だけど!
だけどそんな言い方って!

「愛があれば食べられるでしょ?」
「ないから無理」

あ。あ。あ。
あ。今の、ひどい。

「…あー…分かった、ごめん、言いすぎた」

チハヤが気まずそうに謝る。
そりゃそうだ。この涙、どうしてくれるんだ。

「食べるよ」

そう言ってチョコよりもあたしの頬に手をかけるチハヤ。
ぺろり、と涙がチハヤの舌で掬われた。

「あー、しょっぱい」
「自分が舐めたんじゃん」
「いいんだよ。しょっぱいものが欲しかったから」
「…」
「そのまま泣いててもいいよ」
「ほんと、意地悪だね」
「分かってて、好きなんだろ?」
「…そうだよ」

まだ不貞腐れたままそう言うと、チハヤは一瞬驚いた顔をして、満足そうに微笑んだ。
なんだこのやろう。

(すきすきすきすき!)





牧場物語/チハヤ夢
お題配布元:メガロポリス

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