拍手ありがとうございました!よろしければ祈ひかをどうぞ( ˘ᵕ˘ )(2/4)

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 気分が重い。胃が痛い。動悸が止まらなくて食事も喉を通らない。明日のことを考えながら大きな溜息をひとつ吐く。ひとつと言わず何度でも吐き出してしまいそうだ。とにかく不安で押し潰されそうになる。明日が早く去ってほしいような、来てほしくないような、そんな複雑な感情でいっぱいだ。

 「と、特待生さん……? 顔色が悪いみたいですけど、大丈夫ですか……?」

 談話室でずっとぼんやりしていたようだ。気付けばあたりは私だけ、ではなく一人声を掛けてきた人物がいる。その見知った顔と声を認識して私は我に返る。

 「あ、祈。お疲れ様です。えっと、実は明日オーディションがあるんですけど、それがメインキャストのオーディションなので、今からとても緊張していて……」

 誰だってオーディションは緊張するものだと思うけど、中でも私のこの緊張ぶりは尋常ではないだろう。情けないところを祈に見せてしまった。

 「ごめんなさい、こんな話をしてしまって」

 「あ、いや、全然いいんですよ! 緊張するのも無理はないです。それがメインキャストを決めるものなら尚更……」

 祈はそう言いかけて、あっ、と声を上げた。何かを思い出したかのように懐からある物を取り出し私の前に掲げた。

 「そういえば、新しく特待生さんのお守りを作ったんです! 丁度良いタイミングでしたね」

 可愛らしくレースで縁取られたそのお守りはとても精巧に作られていて、祈が手作りをしたとは思えないほどだ。

 「これ、私にですか!? すごく可愛いです、ありがとうございます!」

 「俺の気持ちをたくさん込めましたから、これで特待生さんは大丈夫です!」

 大丈夫。祈の笑顔とその言葉でさっきまで不安で押し潰されそうだった気持ちが今ではすっ、と軽くなったようだ。それにこのお守りを握り締めてると、不思議と心が和らいでくる。ぎゅっ、とお守りを大事に抱える。

 「特待生さんは大丈夫ですよ。だって毎日ずっと努力して、頑張って練習してることだって、俺は知ってますから。俺はずっと特待生さんのことを見てましたから、明日は絶対にバッチリだって俺は信じてます!」

 祈の言葉が深く私の胸に広がる。

 「祈がそう言うと本当に大丈夫な気がしてきました。ありがとうございます。明日はこのお守りと一緒にオーディションに臨みますね!」

 また祈が笑顔を見せる。この時から既に私の重苦しい気持ちは完全に晴れていた。



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