ある日の梶原邸     景時×望美&朔+黒龍



「あれ?おかしいな・・・・・・」
 昨夜はあったのだ。
 間違いなく部屋で着替えた時においたはずの手袋がない。

「オレのお気に入りの手袋ちゃ〜ん・・・・・・」
 手袋はそれなりに磨耗する。
 同じモノを大量に購入してあるが、手に馴染むにはある程度の
日数が必要だ。
 具体的には、使用開始より二週間程度が一番好みだったりする。

「おっかしいな〜〜〜。ど〜こいっちゃったのかな〜?」
 部屋にはないと判断し、今度は邸内へと探索範囲を広めた。



「あら、兄上。どうなさいましたの?」
「あ、朔。あのさ、オレの手袋しらない?昨日確かに部屋に置いた
と思ったんだけどさ〜、見当たらなくて」
 黒龍と庭掃除をしている妹に尋ねる。

「ああ。それでしたら・・・これでしょうか?」
「ああっ!!!どうして・・・・・・」
 朔が木の枝で持ち上げたのは、見紛うはずもない景時の手袋。
 残念ながら、いい感じに灰に近づきつつある。

「庭の草むしりにお借りしたの。黒龍の手が汚れてしまうでしょう?」
「・・・・・・そうだね」
 草むしりの時に指先に穴があいてしまったらしい。
 ついでとばかりに雑草と一緒に燃やされている最中。
 朔は黒龍のためと思ったのだろう。

「・・・・・・景時。どうした?」
 子供の姿でありながら、威厳だけはリズヴァーン並みの黒龍。

「いっ・・・いやあ・・・・・・うん。わかればいいんだ。うん」
 黒龍に文句を言おうモノならば、妹より厳しい言葉を賜るに違いない。
 ガックリと肩を落とした景時が部屋へ戻ろうとした時、
「兄上。冗談ですわ。こちらは処分を頼まれた方の手袋。兄上のお探しの
手袋は望美が洗濯してくれてます。今頃は干してありますわよ?」
 朔が肩をすくめながら事の真相をばらす。

「望美ちゃんが?!・・・・・・うわっ」
 南の庭がある方向へと簀子を駆け出した。



 すでに風にはためいている洗濯モノたち。
 景時の手袋も仲間入りしている。
 望美がそろりと手袋と手を繋いだりして戯れているのが見えた。


「声・・・かけにくいかな・・・・・・」
 簀子でしゃがみ込むと、望美の楽しげな背中を見つめる。
 望美は景時と握手をしているつもりなのだろうと思うと、それだけで
鼓動が早くなってしまう。



 君がいてくれるだけで、嬉しいんだよ?
 偽りのない、真実の気持ちを君に伝えたいと想う。


 
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