うららかな日曜の午後。

イザークはすっかり顔馴染みのラクスの邸へと足を運んでいた。

いつものように外のテラスへと案内され、執事の淹れたローズティを飲む。

その後、いつものように二人は「秘密の場所」へと向かった。



作りものの陽が照り、

作りものの風が吹き、

作りものの葉が揺れる。



そんな、世界。





「良いお天気ですわね」



「そうだな…」




言うが早いかみずみずしい緑色のベッドに横になるイザーク。

くす、と小さく微笑みながらその隣にちょこんと座る。



いつもの、ように。




イザークもラクスも、無言で空を眺める。

それが二人が会う度行っている日課みたいなものだった。





突如、ぶわっと突風が吹く。

桃色の長い髪がふわりふわりと宙を舞う。




「珍しいな」



「ええ」




最初のうちはすぐに収まるだろうと

気にしていなかったラクスも、

継続的に吹かれる風に弄ばれる髪に気を取られる。

繊細な白い手で抑えられる桃色。




「ラクス、」



「困りましたわね、いつまで続くのかしら」




言った傍から前髪まで暴れ出し、

最早収集がつかなくなってきた。

イザークはラクスを観ながら

未だ止まぬ風に苛立ちを感じていた。




「…ッ、管理は何をやっているんだ!」



「おかしいですわね、」




こんなことが起こるなんて、と

珍しくラクスが困り果てている。





ぎゅ、と手を強く握る。



自分は、何をしてあげられるだろう?



目の前の少女に



自分が、唯一微笑を向けられる少女に――





もう一度、ぎゅ、と強く握ると

その勢いで立ち上がる。

何事かと驚いたラクスに

待っていろと簡潔に伝えると

元来た道の方へと走り出した。

ラクスはただただ、その背中を見つめている。





















どれぐらいの時間が経っただろう。

長かったような、短かったような

当然ながら継続的だった風もだいぶ

収まっていて。



再び瞳に映った少年は肩で息をし、

頬には少量ではあるが汗が垂れている。




「イザー、ク…?」



「ッ、はっ…。も、止んだか、」




風はっ…吐き出すようにそういうと

来た時と同じように緑のベッドにダイブする。




「イザーク?」




そんなラクスの声に反応するように

ばっと起き上がると、座ったままのラクス

に向かい合うようにあぐらをかき、




「ん。」




ずい、と小さな、しかし可愛い紙袋を差し出す。

小首を傾げるラクスに、更にずい、と近づける。

不思議そうに受け取り、「開けてもよいですか」

とラクスの質問に、好きにすればいい、と

普段の口調で返す。しかし、その頬はどこか紅い。




「まぁ…っ」




カサ、と開いてみれば

眩いほどの黄金色の髪飾り。




「きれいですわね」



「………」




返事は、しない。

しかし決して無視しているわけではない。

ただ単に、

返す言葉が見当たらないだけ――




しばし見つめていたかと思うと、

両手を使って器用に前髪を留める。



「…似合います?」



「もう、風も止んだしな。不要だったな」




そう皮肉めいた台詞にも

小さく微笑みを落とすと、




「大切にします」




ふん、と顔をそっぽに逸らすと、

今度は穏やかな風が二人を包んだ。























「ラクスってその髪飾りずっとつけてるよな?」




あの突風と同じように唐突に投げつけられた言葉に、

ラクスはきょとん、とした後、すぐに微笑みを取り戻す。




「そうでしょうか、自分では気にしていなかったのですけれど」




繊細な白い手をやんわりと併せると、静かに双眸を閉じる。




「……なんか、思い入れあるみたいだな」



「え?」




明るい髪の少女は、頬杖をついたまま「にぃ」と笑って






「だってさ、すごい嬉しそうな顔してるぞ?」

















軽く一言戴けると嬉しいです*

あと1000文字。