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ねじれ木の森の案内人:アルケミスト

 錬金術師のエナは、シェン街の外れ、ねじれ木の森の近くの館に暮らしている。ここへは彼女の知識や研究の成果を求めてやって来る者も多い。
 今夜も、ひとりの客がエナの研究室を訪れていた。
 招かれざる客だ。
「黄金はどこだ。どこにある」
 ぎらつくナイフを手に、エナにせまるその男は盗賊だ。魔術の心得もあるのだろう。館の主は魔法のロープで身動きがとれないでいる。
「知ってるんだぜ、あんたが錬金術を完成させたってのはな」
「ずいぶん、早い耳をお持ちのようね。それに魔法の心得もある様子。研究を横取りする魂胆かしら?」
「ふん、研究には興味はねえ。俺はそれほど欲張らないのさ」
「感心だこと。長生きの秘訣よ……でも残念ね、お目当てのものはまだないわ」
 エナがそう言うと、盗賊はさらにナイフを近づけて怒気をはらんだ目でにらみつける。
「ばあさん、嘘をつくと良くねえぞ」
「まだ、と言ったのよ。焦らないことね。ちょうど今、裏庭の小屋で錬成陣を試しているところ。成功していれば、それを好きなだけ持っていきなさい」

 盗賊は、教えられたとおりに裏庭へやって来た。目的の場所はすぐに見つけた。
 裏庭の中心に建てられた小屋。周囲には大小さまざまな庭石が置かれている。なにやら意味ありげな配置が不気味ではあったが、黄金への期待でそれを打ち消すと、盗賊は意を決して小屋の扉に手をかけた。
 入ると小さな机が置かれていて、そこに延べ棒が十ほど並べられていた。盗賊の顔が思わずほころんだのは、台の上の金属塊の半分近くが、黄金の輝きを放っていたからだ。
 すぐにそれらを袋に放り込み、立ち去ろうとして、盗賊は足を止めた。
「まてよ。せっかくだ、もう一本くらい手に入らねえかな」
 そう思った盗賊は、待った。錬金術師を縛るロープはまだ解けないはずだった。逃走の時間も惜しいが、みすみす美味そうな獲物を逃す手はないのだ。
 望んだ変化は、小一時間ほどで現れた。鈍色の反射が、みるみるうちに黄金色になっていくのだ。
「へへ、ばあさんの言ったとおりだ。焦っちゃいけねえな」今夜の収穫に興奮しながら呟く。
 そして今や黄金となった延べ棒に、盗賊は手を伸ばした。
 変化は、もうひとつ訪れた。

「エナ老師、荷はたしかにあずかりました。魔術師ギルドへ届けます」
「ええ。朝から悪かったわね、ノード。埋め合わせはいずれまた」
 金塊……に見える鉛の延べ棒を数本と、実験の資料を積んだ荷馬車が館を去って行くのを見届けて、エナは裏庭へと足を向けた。
 長年の研究から導き出した置き石の錬成陣。その中心に建てられた小屋に入ると、一体の黄金像が立っていた。荷馬車に預けたものと同じ、中身は鉛の塊だと調べはついている。
 袋を担いだ男性の姿をしたそれは、何かに手を伸ばしている仕草や、その表情は不気味なほどに精緻を極めていた。
 いまにも、いや、まるでいまのいままで動いていたかのようだった。




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