よみましたのご報告、ありがとうございました! 以下短いですがお礼のSSですのでお楽しみください♪ ただしがき ※英二視点です ※未来形です ※R18でお願いします。 1週間前に太平洋上で発生した台風は、次第に勢力を増し、日本列島に接近中だ。 ここは、東京都下某市。 山が近い地形のために、普段から23区内より雨がちな気候である。 この町には大学く、スポーツメーカーの営業担当である俺は、週の半分はここを訪れている。 「そのファイルだけ送ってくれって。今日は直帰でいいそうだ」 「やったぁ!」 言いながら、俺はメールの送信ボタンを押した。 助手席の上司は携帯電話を切って、俺の子供じみた言いぐさに苦笑した。 台風接近のために、本社でも早期帰宅命令が出ていた。 23区内海側の本社に戻っていると、俺たちも帰宅難民になりかねないというわけだ。 ノートパソコンの電源を落とし、鞄にしまった。 「風が強くなってきたな」 上司が窓の外を窺う。 「雨はまだのようですけど・・・」 言いながら、ワイパーの上にふと目を留めた。 「・・・カ、カタツムリ!?」 「ええっ、どこだ?」 「ワイパーの上・・・」 「ほんとだ。連れて来ちまったな。かわいそうに」 薄い緑色の殻を背負った小さなカタツムリが、心細げにワイパーの端につかまっているのだった。 「脱皮したてかなあ・・・」 「懐かしいな。俺、子供の頃飼ってたよ」 「あ、俺もです。姉さんたちが気持ち悪がって捨てちゃって、泣いたことあったなあ」 上司は車から降りると、カタツムリを手に取った。 どこかの木の上にでも置いてやるのかと思いきや、そのまま手の平の上に載せて、車に再び乗り込んだ。 「子供の土産にちょうどいいだろ」 上司はカタツムリをハンカチを広げた上に載せた。 カタツムリは、まだやわらかい殻に露をつけて、きらきらと輝かせている。 台風と、カタツムリか。 大切な思い出がよみがえり、知らず笑みがこぼれる。 「お前、何、にやけてんだ?」 「秘密でーす」 俺は、エンジンをかけて静かに車を走り出させた。 ☆☆☆ ピンポーン。 ドアベルが鳴り、玄関へ跳び出していくと、すでに鍵を開けて入った大石が立っていた。 横なぐりの雨に髪の毛とシャツを濡らしている。 水も滴るなんとか、である。 「台風どこまで来たって?」 「まだ上陸してないみたいだよ」 大石のような男でも、さすがにこういう時は、やや落ち着かない。 「ただいま運行見合わせとなっているのは、JR××線、××線、都営地下鉄××線、××線・・・」 大石は、ネクタイをゆるめながら、テレビのニュースに見入っている。 「早めに出られてよかったね」 「英二も。道、込んでただろう?」 「うん・・・」 椅子に腰掛けた大石の後ろに立ち、腕を回した。 濡れて肌に貼り付いたシャツが、ひやりとするくらい冷たい。 「風邪ひいちゃうよ。シャワー浴びて来たら?」 大石はそれには答えず、代わりに俺の手を取った。 そのまま、口元に持って行き、指に口づけた。 「おかえり」の口づけが、今日はまだだった。 背中越しに軽くキスを交わす。 不意に大石は立ち上がり、俺の腰に手を回し、よいしょとばかりに抱き上げた。 「ちょ・・・!」 俺は脚をばたばたと動かして抵抗した。 大石はそのまま歩いて、バスルームの脱衣所で俺を下ろした。 「一緒に暖まろう」 「俺、もうシャワー浴びちゃったし・・・」 「英二は、そんな顔して冷たいこと言うんだな」 大石は、俺の頬に手を当てて言う。 ・・・そ、そんな顔って!? 「俺、どんな顔してる・・・?」 「・・・エッチしたい、って顔」 「・・・!!そんなこと・・・」 ・・・あるかもしれない、いや、まちがいなくあるだろう。 とは、答えない。 「飲むとあんなに素直なのにな・・・」 飲ませないけど、と大石は言いながら、キスをくれた。 ・・・だって。台風来てるし。 俺たちのそもそものなれそめは、台風の夜からなのだ。 だから、台風が来るとか聞いただけでも、俺はソワソワしてしまう。 こうして二人で暮らし始めてみて、ソワソワの理由がはっきりわかった。 要は、俺はシたいのだ。 だって。 台風の夜なんだもん。 大石は、俺の耳たぶを食み、首筋に口づけ、舌を這わせた。 俺がくすぐったさに笑い声を漏らすと、大石も嬉しそうに笑ってさらに激しく口づけた。 ☆☆☆ 「・・・あ、あ、あ、んんんっ、あぁっ、も・・・」 シャワーの音にかき消されるから、安心していつもよりも声が出てしまう。 顔の半分を鏡に押しつけて、お尻を突き出している俺。 頭の上ではシャワーヘッドから熱い湯が噴き出している。 その水の描く弧をくぐるようにして、大石は屈み込んでいる。 温かくて柔らかい舌が這いずり回るようにして、俺のいいところを刺激している。 姿勢はキツくて、快感に集中できないけれど、シチュエーションは嫌いじゃない。 鏡に映る自分のイヤラシイ顔。 誰にも見せられない格好で、誰にも見せられないところを、大好きな人にめちゃくちゃにされる。 大石のごつごつと大きな手が、俺の肌に触れている。 そこが、ざわざわと落ち着かない。 ただ触れられているだけなのに、バカみたいに感じてしまう。 「もっと、ぎゅっとして・・・」 「もっと、何?」 「手で掴んでよ、お尻・・・」 「これが、いいの?」 大石は、俺の言う通りにお尻を両手で鷲掴みにする。 「あ、ああん・・・!んっ!いいの・・・」 大石の大きいのが入って来て、慣れなくて苦しくて、動かないでじっとしてもらっている時。 こうやってお尻を掴まれて、ゆっくりと自分で腰を揺らす時。 その時を想像したら、俺はハズカシイ声を上げて腰を突き上げるように動かしてしまった。 まだ指を入れられてさえいないのに・・・ 「んんっ!・・・んんっ!」 「英二、すごい。エッチだ・・・」 「・・・もぉ、イキたい・・・」 「ウソだろ?まだ指も入れてないのに・・・」 「だって、なんか・・・」 頭を下ろして自分の脚の間を覗き込むと、完全に立ち上がった自分のそれがびくんびくんとひくついていた。 その先は自らの滴をたくわえて、てらてらと光っていてイヤラシイ。 「・・・あふれそうなんだもん」 「まだあふれちゃダメだよ!ほら!営業ノルマとか、上司の顔とか、萎えること思い出して!」 「やだぁ・・・イキたいぃ・・・じゃ、ここでシよ・・・」 「入れたらすぐ自分だけイっちゃうつもりだろ・・・」 大石は慌てた様子で、蛇口をひねってシャワーを止めた。 浴室の扉を開けて、バスタオルを掴むと、タオルと一緒に俺を抱き上げて歩き出す。 頭をぶつけないように片手で覆ってかばってくれる、そういうさりげない気遣いにきゅんとくる。 「・・・おフロじゃ、シたくない?」 「ううーん。部屋でしたいの・・・」 言葉を濁す大石。 なんだか怪しい、と俺は思う。 寝室の窓には、雨が激しく打ちつけていた。 一戸建てと違い、マンションの一室であるここには雨戸がない。 風の音と雨の音がそのままに聞こえる。 外は暗くなり、カーテンを引いていない部屋は薄暗い。 「すごい雨だよ」 思わず窓に近づいた俺の背中を、大石が後ろから抱くようにしてバスタオルで覆う。 「ここで、しちゃおうか・・・?」 ええ!?ここ!? ここって、・・・窓際で!? オロオロとしているうちに窓ガラスに押しつけられてしまった。 「カ、カーテン・・・」 「見えるはずないよ。こんなに雨が強いんだから・・・」 マジで!? う、うそだろぉ!? つーか、絶対、初めからそのつもりだったろ!? 大石って、そういう、『見せたい』趣味があったわけ・・・? 風に吹き付けられた雨が、水のカーテンのように窓ガラスを覆っている。 雨音と風の音。 まるで、滝の中に閉じこめられたようだ。 いっそのこと、このまま二人で閉じこめられたいよ。 外の世界なんて、気にしないで、忘れちゃって。 「・・・いいよ。来て・・・」 観念して、肘を窓ガラスに突いた。 誘うように、少し後ろを振り返る。 強い風に、窓がガタンと音を立てて持ち上がった。 ☆☆☆ 「・・・もっと・・・ううん、もっとじゃなくて・・・」 「・・・どうしてほしいの・・・?」 大石の大きい両手のひらが、俺のお尻をぎゅっと掴んで揺らすように押し上げる。 挿し入れられたそれは、ゆるゆると焦らすように動かされている。 壁や天井を軽く擦り、擦ったと思えばまた離れ、気持ちいいのに気持ち良くなりきれない。 さっきは早くイキたい一心だったし、やっぱり早く昇りつめたい気持ちもあるけれど、このままもどかしい快感の中で溺れ続けていたくもある。 「このまま・・・」 「『もっと』じゃ、ないの・・・?」 「これ、気持ちいいよ・・・それに雨がカーテンみたいで・・・」 「・・・キレイだな」 「うん・・・ずっと見ていたいよ・・・」 大きな雨粒が風に叩きつけられて、窓ガラスに当たり、潰れる。 潰れた雨粒は、閉じこめていた水を解放するように溢れさせる。 その溢れた水が次々に、上から下へと流れ落ちて窓ガラスを覆っていた。 あの晩も、こんな風だったのだろうか。 家中の雨戸を閉めてしまっていたし、俺はめちゃくちゃに酔っていたから、あの時は当然わからなかった。 けれど、あの晩もきっと、雨は二人の世界を守るように覆っていてくれたのだろう。 「なんか・・・俺、すんごく幸せなんだけど・・・」 「俺も・・・。台風の晩だからかな・・・」 あたたかく熱いものが、胸の奥から沸き上がりあふれ出しそうになる。 「英二、キツイよ・・・」 「んっ、んっ、んんっ・・・」 自分の意思とは別に、貪るように引き絞るように、それは蠢いていた。 腰からせり上がる快感に、危うく獣めいた声を上げそうになる。 「あっ、あっ、あーっ、あーっっ!!」 「・・・ちょっと、ゆるめて。ゆるめないと・・・」 大石が吐き出した熱いものが俺の中であふれた。 「英二も、イって・・・」 じゅ、じゅ、じゅぶ、じゅぶ・・・ 動きをやめない大石のそれが、外の雨風の音に負けないくらいに音を立てている。 あふれ出した幾筋かが、脚の内側を嘗めるように伝って下りていく。 脚の外側を、大石の両手が擦り上げる。 「あ、あっ、あんっ、あぁんっ!」 あっけなくイった俺の吐き出したそれが、窓ガラスを内側から汚した。 ☆☆☆ 「台風一過とは、よくいったものだな」 けだるいまどろみの時に、大石が口を開いた。 俺は、射し込む光の眩しさに目を擦る。 窓の向こうに覗く空は、昨日の嵐が嘘のように真っ青に晴れ渡っている。 起床と言うには少し遅い時間まで寝過ごしてしまった。 よく見れば、窓ガラスは砂泥を含んだ雨に打ちつけられて、曇っている。 そして、それとは別に、窓の下半分が汚れていた。 もちろん、原因は自分である、いや、大石である。 「・・・窓、掃除しなくちゃ・・・」 「・・・しなくてもいいんじゃない?」 「・・・ええ!?」 「アレ見ると、こう、思い出すって言うかさ。ホラ、また燃える、って言うか・・・」 「・・・大石って・・・」 呆れて開いた口がふさがらない。 昔はあんなに純情でかわいかったのに。 台風の夜に、寂しくて死んじゃうと言った彼はどこに消えたのだろう。 思わず、大石の頬を指で摘んだ。 「これって、大石だよなあ・・・?」 「イタタ!何するんだよ、英二!」 「『寂しくて死んじゃう~』とか、言ってみてよ?」 「だって、寂しくないよ・・・」 大石は、俺の首元に頭を埋めた。 「・・・英二がいてくれれば」 俺は、大石の頭を両腕の中に収めた。 小さい子供にするように、頭と背中とをぽんぽんと叩く。 愛しさがこみ上げて、思わずぎゅっと抱きしめる。 「・・・英二」 「ん?」 「・・・したくなっちゃった。また・・・」 「ええ!?」 言われてみれば、体に押しつけられていた大石のソレが硬さを増している。 「ま、真っ昼間っから・・・?」 「・・大丈夫。カーテン、遮光だから・・・」 ・・・いったい何が大丈夫なのだ。 大石がカーテンを閉めに立つ。 恥ずかしそうに頬は幾分上気し、俺から目を逸らしている。 ・・・カワイイなぁ。 と、思ってしまったが最後、貴重な休日が非生産的に過ぎていくことになるのだった。 ベッド脇の鏡越しに、自分と目が合った。 たいそうなニヤケ顔だった。 end 最後までお読みいただきありがとうございました!
カタツムリのエピソードは、英二編で書こうと思っていたのですが… 気長にお待ちください! また会える日を楽しみにしております! よろしければ何か一言メッセージを残してくださいませね^^ |
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