スイート・スイーツ コールド・スイーツ

 キッチンから香ばしい香りがしている。 ひくっと鼻が動いて、僕は目が覚めた。

 太陽の日差しが差し込むリビングにいることを確認して、 ふわあ と、あくびをひとつ。

 フランが おやつ 作ってるんだろうなあ。 ま、僕は食べれないんだけどさ。

 がっかりした気分で、クーファンを持ち上げて、キッチンへ向かう。 食べることに関して、 がっかりした気分 は、この先 何十年続くかなあ・・・。


 <おはよ>

 「あら? イワン おはよ。 もう少し待っててね。これ 仕上げちゃうから」

 
予想通り というか、 おやつ=お菓子 を作っているフラン。 焼きあがったパイ生地に、カットしたフルーツを盛りつけている。

 イチゴ・オレンジ・メロン・ブドウ・リンゴ


 <果物のオンパレード だね。こんなに用意するの大変だったんじゃない?>

 「そうでもないわよ。 ほら 「カットフルーツ」っていう、すでにカットされたフルーツがカップに入って売っているの。で、これは丁度 半額 だったのよね」


 テーブルの片隅にある空のカップには 「カットフルーツ」 と書かれた蓋が見えた。あれ? これって、普通 300円ぐらいだよね? 半額かあ。

 ま、フランにしたら お買い得 なんだろうな。 



 <フルーツパイなんだね>

 「豪華版よ。 ほら、 こうやって・・・・ ホットなパイと、甘いフルーツ そして、コールドなアイスの組み合わせ。w(ダブル)のおいしさ って感じでしょ」


 盛り付けたフルーツの隙間に、スプーンですくったアイスをそっと置いて、さらに、チョコレートソースで、ゆるやかなカーブを描くと、フランの言うように 「豪華版」なフルーツパイが出来上がった。


 「ふふ。 こういう 贅沢 もやってみたいのよね」


 満足げな笑顔に、僕もつられて笑みを見せたけど。

 やっぱり・・・ がっかりだよ。  君の作った 豪華なおやつ が、食べれる日 なんて・・・ 夢のまた夢だよ。 正夢にもならない。


 <フラン? なにしてんの?>

 「うん? ちょっと待ってて」


 フランはフルーツタルトからイチゴを一つ つまんでお皿に乗せると、それをスプーンの背でつぶしだした。 そして、アイスクリームを少し加えて、混ぜ始める。

 色合いは・・・うーん・・・微妙。 もしかして、 チョコソースだけじゃ足らずに、 イチゴソース を作って足すことにしたのかな?


 「さ、出来上がり。 ほら、 口 あけて」

 <え?>

 「イワン専用デザートよ。 専用よ、専用」


 やたらと 専用 を強調しながら、フランは僕の口元をスプーンの先でつつく。そのスプーンに乗っているのは、微妙な色合いの イチゴアイスもどき。


 「どう?」

 <・・・どうって・・・。イチゴとアイス>

 「もう! そうじゃなくて、甘いと冷たいのコラボスイーツよ。 美味しいでしょ?」


 甘いと冷たいのコラボスイーツって・・・ イチゴアイス だろ?


 「どう? イチゴアイスもどきでも、人に作ってもらったものを食べるのって、おいしいでしょ?」

 <・・・・そうだね>

 「イワンは贅沢な王子さまだもんね。 今度は何が食べたい?」

 <じゃあね。ボルシチ>

 「・・・あのねえ。 それはまだ早いです」

 <僕は わがまま王子 なんだもん>

 「可愛くないけどね」


 口の中いっぱいに広がる 甘さと、キュンとした冷たさ。

 食べ物を食べる ということに関して、がっかりした気分を、まだこの先も味わうんだと思っていた僕だけど。

 人が作ってくれた物を食べれることに関しては。

 これから先もまだまだ続くんだなあ って。

 なんだか、矛盾してるけど。

 みんなと同じ物を食べさせてくれようとしているフランの気持ちが、甘く広がって。

 嬉しくて少しだけ、泣きそうになったのは 内緒 だよ。

★あとがき★
 なんとなーく 母の日 をイメージしてみました。
 当サイトのイワンは わがまま王子 です(笑) かなーりひねくれてます。 顔や行動に出さないだけで、結構 やきもちやき な感じです。
 そんなイワンの一番の理解者は、 ジェット だと思います。 一応 一番 付き合いが長い という設定なので。
 ので、いたずらなんかをコンビでやったりしてます。 喧嘩とかも、本気でやるでしょう。そんな二人も見てみたいです。
 今回のスイーツは、スーパーの料理ペーパーからアイディアをいただきました。 美味しそうでした。
 私は お菓子作り 苦手なんで、フランがうらやましいです
 
 



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