拍手ありがとうございました!



 静かに障子を開く。
 二人部屋の中心に敷かれた一組の布団。差し込む月明かりが、そこに眠る男の裸体を照らした。
 情事のあと、湯浴みに誘ったが明日でいいと断られてしまった。よほど疲れていたのだろう。
 疲れさせたのは他でもない自分だ。
 だったらせめて身体を拭いてやるから待っていろと告げると、気怠げな笑みを浮かべて「待ってる」と答えたのが五分ほど前の話である。いつ力尽きたのか、眠りは深そうだ。
 浴場から持ってきた、湯の張った桶と手拭いを枕元に置き、水滴を飛ばさないよう注意を払いながら濡らした布を硬く絞る。
 羽織るだけの形になっているシャツの両側を開き、胸元に手拭いを当てる。点々と飛び散った白濁と、汗を拭きとっていく。つんと尖った乳首は情交の最中にいじり過ぎたせいか、まだ赤く腫れたままだ。よく、シャツに擦れて痛いと嘆いていたことを思い出す。今も痛かったりするのだろうかと表情を窺ってみたが、変わらず気持ちよさそうに寝息を立てている様子に胸をなでおろした。

 今度は脇腹から下腹部へ、布を滑らせる。
 腿の付け根に印した鬱血の跡がとても煽情的だ。見えるところは絶対に駄目だと言うから、ここにした。ここだけじゃない、下生えの生え際と、臍の横と、内腿にも付けた。この辺りは陽焼けもせず、余計に色の白さが際立っている部分である。皮膚も薄く簡単に跡が付くので、半ば癖になっていくつも刻んでしまった。
 光忠は、己の身体がそれほど鬱血まみれになっていることをまだ知らないだろう。明朝、叱られる覚悟はしている。悪いとは思っていないので、謝るつもりはないが。
 唾液や、先走りや、あらゆる体液で汚れた陰茎とその下の袋を丁寧に清めてやり、脚を開いて膝を立たせ、後孔に指を沈めて中に出した欲望を掻き出してやる。温かい肉洞の中で指を動かすと、ぐちゃぐちゃといやらしい音がする。それに合わせて、んぅ…、と小さな呻き声が上がり、顏を上げると額に手の甲を乗せた光忠が悩ましげに眉を顰めていたので、思わず手を止めて、喉を鳴らした。
 薄く開いたくちびるから零れるせつない吐息を聞くたびに、体内の血液が下肢に集中していくのを感じる。眠っているところをおかまいなしに犯したくなるのを理性で抑えて、すばやく処理を済ませ、目の毒を布団で覆い隠した。結局、光忠が目を覚ますことは最後までなかった。

 湿った指を湯で洗い、下衣を押し上げる昂りを見下ろして溜息をひとつ。
 このあと湯浴みに行くつもりだったが、やめておこうと思う。こんな夜更けではあるが、万が一、誰かに遭遇したら大事である。
 押し入れから自分の布団を引っ張り出すのも面倒で、無理矢理同じ布団に入り込んだ。汗が引いたからだろう、光忠の身体が冷えてきている。抱き寄せると、暖を見つけたかのように光忠が擦り寄ってきて、脚が絡んできた。
 甘えられているようで、悪い気はしない。
 しないけど、このままではいつまで経っても下半身は落ち着かないだろう。今宵の安眠はいつになることやら。
 まあそれもいいか、と、広く逞しい背中を撫でながら、眠くなるまで光忠の寝顔を眺めることにしたのだった。



ついでに一言あればどうぞ(拍手だけでも送れます)
あと1000文字。