明日世界が終るとしたら(world)



今日もどこかで宴会をしてるようで、笑い声が聞こえてくる。
最近気づいたが城の中は結構賑やかで、騒がしくしても怒られないらしい。
兵士なんかが宴会をやってる姿も見る。
城ってもっとなんか厳しくて豪華でハイソな世界だと思ってたわ。
まあ、あいつの城だしな。
こんなもんか。

「この世界の人間、宴会とか好きよね」

でも、私は入れない。
前に兵士の宴会に潜り込もうとしたら水を打ったように静まり返りやがった。
あの空気の読めない奴お帰りくださいの空気。
呼んでない合コンに気合入れてきちゃった人みたいだった。
今思い出しても恐怖だ。

どーせ呼ばれてませんよ。
どーせ招待されてないのに来ちゃった客ですよ。
なんでこいつここにいるの、のあの空気。
あれはもう耐えられない。
私はどーせ、こんな悪魔と飲んでるのがお似合いですよ。
ていうか今は怪我してて飲めないしね。

自分が入れない楽しそうな集まりほど憎いものはない。
なんかあって宴会つぶれねーかな。

「ああ、いつ死ぬか分かりませんしね」
「え?」
「こちらは戦が続いています。なので、みんな明日*******。だから、今日を楽しむ」
「ふーん」

よく分からない単語があったが、なんとなくわかった。
そうか、こっちは戦争があるんだっけ。
そうだったら、兵士の皆さんとかはそりゃ、酒も飲むよね。

「あなたの世界は、随分平和そうですが、こちらは明日終わるとも分かりませんからねえ」
「それは知ってる。死にかけた」

私だってこっち来てすでに二回も死にかけている。
あの時明日はもうないと思った。

「明日世界が終るとしたら、あなたは何をするんですか?」
「………」

酒。
ああ、もう本当に嫌だ。
それしか浮かばない自分が嫌だ。
本当に大事なものほしい。
最後に思い出す人間が欲しい。
酒飲みたいとか最後に思いたくない。
酒飲んで死にたいじゃなくて、心残りがあって死にたくないになりたい。
ああ、いやだいやだ。

『毎日よくだらだらと無益に過ごせますねえ』

私の思考を読み取った悪魔が笑う。
でももうそんな言葉に動じることはない。

『私の有益な毎日を奪ったのはどこのどいつだ』

あっちの世界にいればきっと今頃旦那ぐらいいたわよ。
あっちの世界にいれば心残りの一つや二つあったわよ。
あっちの世界にいれば死にたくないって思ったわよ。
あっちの世界では、いや、もうやめよう。

『言い訳出来る環境を与えてあげた私ってかなり優しくないですか?』
『黙れ。バファリン以下の存在が言葉をしゃべるな』
『バファリン?』

ああ、バファリンは私の痛みを抑えてくれるいいやつだった。
こんな奴と比べるのも申し訳ない。

『まあ、なんか世界の終りまでにはいい人がいるといいですね』
『黙れ、消えろ』

ああ、とりあえずなんでもいい。
世界の終りまでには、酒以外の何かを見つけたい。







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