明日世界が終るとしたら(そこから)



「蔵元さん!明日世界が破滅します!」

今度は何を言い出したのか。
毎日毎日びっくり箱の玉手箱だ。

「えーと、はい」
「さあどうします!」

また随分とぶん投げてきたな。
解答を得たいのならもう少し設問をしっかりしてほしいものだ。

「とりあえずそれが本当かどうか調べて、後は家族に連絡とるかな」

特に考えることもなく仕方なく適当に返す。
すると乃愛ちゃんはいきりたったように、拳を握る。

「そうじゃないでしょう!」
「はい」
「いいですか!明日世界が終る!残るのは恋人と二人きり!」
「あ、二人きりって設定なんだ」

そんな設定は最初なかったぞ。
まあいいけど。
ていうかどうでもいいけど。

「さあ、どうします!」
「生存者探そうか」
「蔵元さあああんんん」
「はいはい」

泣きそうな声を出す彼女の頭をぽんぽんと叩く。
面倒だけど、面白いんだよなあ。

「そうじゃないでしょう!ドラマチックな展開!残された二人!切なさと情熱!燃え上がる愛!滾る欲望!さあ!」
「思い出話でも語る?」
「それもいいですけどおおおお」
「変な声出さない」

撫でていた頭にチョップをくらわす。
乃愛ちゃんは涙目で俺を見上げながら、指を一本立てる。

「いいですか!ハリウッド映画ならもうそこは濃厚で派手なラブシーンしかないですよ!」
「純日本人としては地味で薄暗い邦画にしかなりえないからなあ」
「邦画だって昭和とかはR指定じゃなくても中々派手で濃厚なラブシーンがいっぱいですよ!」
「俺と乃愛ちゃんだったら、シュール系ギャグにしかならなくない?」

乃愛ちゃんは顔をくしゃっと歪ませて、俺のシャツをぐっと掴んでくる。

「そんなに私とラブシーンは嫌ですか!出演拒否ですか!?ギャラはいくらはずめばいいんですか!」
「そういう話だったっけ」
「違います!」

面白いように横滑っていくな。
乃愛ちゃんは俺のシャツから手を離して、ふうっと切なそうにため息をついた。
それから目尻の涙をぬぐい、上目づかいに訪ねてくる。

「でも、最後に二人残ったら、思い出話とかしてくれますか?」
「それもいいね」

最後に二人きりだったら、それもいいかもしれない。
馬鹿な思い出を一つ一つ語って、笑って過ごそう。

「最後は手をつないで、穏やかに過ごそう」
「………」

乃愛ちゃんがどこかむずがゆそうに、唇を歪める。

「何?」
「それも、嬉しいです。一緒なら、すごく嬉しいです。穏やかに過ごせたら、嬉しいです」

いつも穏やかに過ごさせないのは誰のせいなんだってつっこみが出そうになったがやめておいた。
はにかむ様子の乃愛ちゃんが珍しくまっとうに可愛く見えてしまったから。

「蔵元さん?」
「いや、なんでもない」
「そうですか?二人でベッドの中でまったり過ごしましょうね」
「だからそういうこと言わない」

そして頭にチョップを一つ。
まあ、そうくるとは思っていたけどね。

でも、君といたら世界の終りまで、きっと楽しく過ごせるだろう。







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