あなたはやさしい
夜の道に、人影が2つ揺れている。
それ以外に人影はない。もっというなら、彼らは今まで、誰ともこの道ですれ違ってはいなかった。きちんと整備されているし、幅も狭くはないのだが、恐らく、理由はこの暗さにあるのだろう。彼らのいる道は、所々に外灯があって足下も道の先も見えていたが、闇の色が塗られた世界は、なんとなく人を心細くさせるような、そのぐらいには暗かった。
最近気に入っている、手に入れたばかりのピンクのコートに身を包んでいるというのに、ヒカリはうきうきと心踊らせるのでも満足げに笑うのでもなく、不思議そうに、困惑したように、半歩ななめ前にある少年の横顔を見つめていた。横目にちらりと、なんて可愛らしいものではない。じぃっと、まるで縫い止められてしまったかのようにずっとそれだけを見ている。
そんな、あからさまな視線の対象になっていても、少年は歩き始めてから今まで一度も彼女の方を見ていない。それどころか、2人の間には会話すらない。ただ黙って、相手の足音を聞きながら、ポケモンセンターのある大通りに続くこの道を歩いている。
寒さを拒むように、大きさの違う手をしっかりと繋いで。
「…ね、シンジ」
ようやくヒカリが、この状況について聞くかどうか、迷いに迷った末に口を開いたのは――否、開けたのは、ポケモンセンターの灯りがちらりと見えてきた頃。そこでやっとシンジも、視線だけだが彼女に向けて、その先が紡がれるのを待つ。
「なんで手、繋いでるの?」
「…」
「ちょ、無言で離そうとしないでよ!寒い!珍しいから聞いただけだってば」
そこまで言ったところで、するりと抜けた冷たい風から逃げるように、ヒカリは顔をマフラーに埋めてまた黙った。しばらくそれを見てから、シンジの視線がまた前に戻る。
「明日からは手袋をしろ」
シンジはそれだけ言って、最初より少しだけ冷えた細い手を、それを珍しく冷たいと感じる自分の手ごと上着のポケットに突っ込んだ。
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後書き。
シンジ、お前もうちょっと積極的になれ!と思った結果がこれです。ごめんなさい。
寒いのに手袋をしてないヒカリに気づいて、シンジが手を握ったんです。…やさしいか?
説明しないと分からない話ですみませんorz
というか、ポケセンに着いたらどうするんでしょうね(え)
拍手本当にありがとうございました!
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