デートに行こうと約束していたのに生憎の雨。
別に俺は雨でもなんでもいい。貴方と一緒にいられるなら。
けれど貴方は、曇り空を恨めしそうに見つめている。
笑っていて欲しい。
でもその顔は貴方が俺と過ごす一日を楽しみにしてくれていた証拠でもある。
そう考えれば、そんな顔の貴方も愛おしい。
けれど一日中貴方がそんな顔をしているのも勿体無いし、
ずっと窓ばかり見て俺の方へ向いてくれないのも面白くない。
「先輩。
俺は雨、嫌いじゃないですよ」
「……どうして?」
「雨音を聞いていると何だか心が穏やかになる気がします」
「そうかな?
湿気で髪の毛はもわっとするし、何だかむっとして気持ち悪いよ?」
「そうかもしれませんが。
でも、皆に必要なものなんです。
降らなかったらそれはそれで困るんですよ」
「……わかってるけど、でも……」
口を尖らせてアピールしているのは、
今日出かけられなくなったことへの不満だろう。
別に俺は出かけても出かけられなくてもかまわない。
むしろ、
「デートもいいけど、やっぱり俺は貴方を独り占め出来るほうが嬉しいんです」
「譲くん?」
「独占欲が強くて、すみません」
謝るふりをして、貴方をこっちに向かせれば、
貴方は照れたように笑ってくれた。
その笑顔にほっとする。
折角一緒にいられるのなら、少しでも楽しく穏やかに過ごしたい。
お茶を入れてきますね、と立ち上がれば。
いっしょに行く、と貴方も立ちあがった。

愛雨 譲望ver. 1/2
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