ちょっと思いついた小ネタです。
ギアスもコードもない世界で、スザク主役の騎士物語。
最終的には皇子騎士になりますが、スザクを騎士として見出すのはマリアンヌ。
マリアンヌ健在ですのでルルナナは皇子皇女のまま。
舞台もブリタニア固定の宮廷劇。
という感じ。

敵役はシュナイゼル。
「殿下」ではスザク至上のベタ甘ですが、とてつもなくサイテーな酷い悪役です。

冒頭部分しか形になってないので、ブログにアップできるようになるのか甚だ不明ですが、(連載物がどれもまだ完結してないし)時間つぶしに、もし、宜しければ。以下、ご覧ください。









 特別派遣嚮導技術部。神聖ブリタニア帝国第二皇子シュナイゼル・エル・ブリタニア直属の研究機関である。
 7年前まで日本という名であった11番目の領国、エリア11に駐軍しているものの、この地の最高権力者である総督クロヴィス・ラ・ブリタニアの干渉は受けない比較的自由な立場にある。
 故に、技術研究の名のもとにブリタニア軍内では非常識とされる人員配置も可能だ。
 例えば、名誉ブリタニア人を、デバイサーとして、開発中とはいえナイトメアフレームに騎乗させてしまうといったように。




 その、通称「特派」に珍客が訪れた。
 近隣のエリアに遠征中、補給のために立ち寄ったというその人物は、エリア統治軍の片隅にある研究室を興味深げに見て回る。
 金糸で皇帝の記章を大きく刺繍したロイヤルパープルのマントを翻し、純白の騎士服に身を包んだ黒檀のように黒い髪をなびかせた女性騎士。ナイトオブラウンズの第六席、マリアンヌ・ヴィ・ブリタニア。その名に「ブリタニア」とあるように皇妃でありながら、今も皇帝の騎士であり続ける女傑だ。
「へぇ。これが第七世代ナイトメアフレーム?」
 興味津々といった顔で、この子の名前は?と足元に跪くデバイサーに尋ねる。
「はっ。ランスロットであります。」
 膝をついたまま首を垂れた姿勢ながら、よく通る声で知らされた名に、彼女は面白そうな顔をする。
「ふうん。御大層な名ね。ロイド、あなたの趣味?」
「はい~。おっしゃる通りでございます。皇妃殿下。」
 手もみしながら答えるロイドに、肩をすくめる。
「今は、その言い方やめて欲しいわね。
ねえ。これちょっと動かしてもいいかしら。」
「ラウンズ様が、ご騎乗あそばすので?」
 いつもは飄々と人を食った態度のロイドが、常にないほど顔を強張らせる。
「起動キーは、あなたが持っているのかしら。」
 足元の名誉ブリタニア人に尋ねれば、「イエス マイ ロード。」と返ってくる。
「ハイネス」と答えなかったことに気をよくした彼女は、それを渡すように命じた。
「恐れながら……」
 と、その人物は所望の品を渡す様子もなく言葉を続ける。
「これを、お渡しするわけにはまいりません。」
 マリアンヌの眉がピクリと動き、口元が引きつる。
「どういう事かしら。」
 明らかに剣のある響きのある問いかけに、その場の空気が固まる。
 名誉ブリタニア人の立場を弁えぬ発言に、研究員らは蒼白となり息を呑む。
「これはまだ研究開発中の機体です。動作も安定していません。デバイサーである自分でも御しきれない暴れ馬です。そのようなものに妃殿下をお乗せし、御身に万が一のことがあれば、ここにいる全員が陛下に首を差し出さねばならなくなります。どうか、ご容赦ください。」
 俯けた頭をさらに下げ、額が地面にこすれんばかりに平身低頭するその人物に、マリアンヌは眉尻を下げ苦笑した。
「皇妃のわがままに付き合って、斬首になっては,、たまったものではないわね。」
「申し訳ございません。」
 相も変わらず地面に這いつくばるような姿勢のデバイサーに、皇妃は声をかける。
「あなた。名は何というの?」
「はっ。枢木スザクであります。」
 歯切れのよい、りりしい声が返ってくる。
「立ち上がって、顔を見せてくれるかしら。」
「はっ?……しかし…自分は……」
 名誉である自分が、皇妃殿下と同じ目線に立つなど、それこそ不敬でないかと戸惑うスザクに、マリアンヌは重ねて立つよう促す。
「私が、良いと許しているのよ。」
「イエス ユア ハイネス。」
 立ち上がり、臆することなく顔を上げて直立する少年に、マリアンヌは目を細める。
 癖のあるふわふわとした明るい栗毛色の髪、幼さが残るその顔をさらに幼く感じさせる大きな瞳は、エメラルドのような輝きを放つ深い緑色だ。
 年の頃なら10代半ば…にしては意志の強い精悍な印象をを与えるのは、その瞳の力強さか。
「へぇ。いい目をしているじゃない。
年はいくつ?」
「はい。17であります。」
「17歳?私の息子と同じじゃない。もっと年下かと思ったわ。イレヴンて、みんなこんな感じなの?」
 振り返って、後ろに控えるロイド達に確認すれば、オペレーターのセシルが遠慮がちに説明する。
「ブリタニア人に比べると骨格が華奢ですので、実年齢より若い印象を受けるのではないかと。」
 彼女の言葉に、「ふうん。」と納得したように呟くと、ねめつけるように見ながら、スザクの周りをゆっくりと歩く。
 値踏みをするかのような視線に晒されながらも、スザクは正面を見据えたまま直立不動の姿勢を崩さずにいた。
「彼と、この…ランスロットの相性はどうなの?」
 相変わらず、スザクから視線を動かすことなく問いかける。
「適合率94%でございます。」
「94%?ワンオフ機並みの適合率じゃない。」
 ロイドが齎したその驚異的な数値に、さしものマリアンヌも、声を上ずらせてスザクを凝視する。
「もったいないわね。それで、ただのテストパイロットですって?しかも、その適合率で御しきれないなんて……どれだけのハイスペックなのよ。量産できるの?」
「性能を披露する機会さえあれば、いつでも……」
「あの『優等生』は、その機会を作る気があるのかしら……」
 そう言って、笑みを浮かべる。明らかな嘲笑だ。
「どちらにせよ。こんな辺境エリアでくすぶらせていい素材じゃないわ。彼も、この子も。」
 そう言って、白き騎士を見上げる。
「ねえ。枢木スザク。あなた、騎士になる気はない?データを取るためだけのまがい物の騎士ではなく、本物の騎士に。」」
「騎士でありますか……?ですが、自分は……」
 己の立場を弁えた返答をしようとするスザクに、皇妃は不快を示した。眉を吊り上げ、刺すような視線をぶつけてくる。
「優等生的な返答は無用!
気持ちがあるのか、ないのかだけ聞いているの。」
 その言葉にスザクは息を呑んだ。瞑目すると数瞬後に再び目を開ける。その瞳の奥に鈍い光を放つ煌めきを見つけ、マリアンヌは目を細めた。
「───可能であれば、騎士になりたく思います。」
 可能であれば…と控えめながら騎士になる意思があると答えたスザクに、マリアンヌは口の端を吊り上げる。
「気に入ったわ。私の所に来なさい。枢木スザク。」
「はっ?」
 今まで直立不動を保っていたスザクが、思わず姿勢を崩した。
「まっマリアンヌ様っ⁉」
 特派の主任が悲鳴を上げる。
「大丈夫よ。ちゃんと話をつけて、悪いようにはしないから。」
 そう言ってなだめると、彼女は自分の背後を振り返る。
「ジェレミア。」
「イエス ユア ハイネス。」
 今まで、マリアンヌに影のように付き従い一言も発することのなかった男が、初めて口を開く。
 ジェレミア・ゴッドバルト辺境伯。マリアンヌの専任騎士である。
「彼は、あなたに預けるわ。騎士のイロハをたたき込んで、1日も早く使い物にしてちょうだい。」
「イエス ユア ハイネス。」
 皇族に対する礼を取り、深々と頭を下げる。マリアンヌが立ち去ると、姿勢を戻しきびきびとした態度で後ろに控えるスザクに体を向けた。
「枢木スザク准尉っ!」
「イエス マイ ロード!」
 腹に響く大きな声に呼応し、スザクも声を張り上げ返答する。
「本日只今より、貴君の上官となったジェレミア・ゴッドバルトであるっ。」
「イエス マイ ロードっ。」
「マリアンヌ皇妃殿下親衛隊『ロイヤルティナイツ』の一員として貴君を歓迎する。まさに類稀なる栄誉と肝に銘じ、騎士道に精進せよっ!」
「いっイエス マイ ロード!」

こうして、名誉ブリタニア人初となる皇族の騎士が誕生したのである。


 ペンドラゴン皇宮内イルヴァル宮。この宮には、皇帝を守護するナイトオブラウンズの詰め所や執務室、国政を司る宰相府など重要な施設が置かれている。
 ラウンズのために割り当てられている執務室の居間で、マリアンヌは私服のまま、騎士が淹れた紅茶を飲みながら寛いでいた。
「まさか、こんなに早く仕上がるとはね……あれからまだひと月しか経っていないじゃない。」
「御意。さすがマリアンヌ様が見込んだだけの素材であるかと……」
「あら。珍しいわね。貴方が、他人を褒めるなんて。」
 傍らに立つジェレミアにそう笑いかけると、彼は心外だと言わんばかりの顔をする。
「私は、常に公正な判断を心がけております。私が酷評するのは、それだけ未熟だからなのです。」
「では、枢木スザクは未熟者ではないと?」
 面白そうに尋ねる皇妃に、ジェレミアは首肯する。
「もちろん、未熟な点は多々あります。されど…その技量はそれらを補って余りあるものがあります。
幼き頃より武道を嗜んでいたようで、騎士としての素養は十分備わっておりました。細かい作法や所作などを仕込むだけで済みましたので……逸材ではないかと。」
「あら、まあ。べた褒めじゃない。」
 マリアンヌは、楽しそうに笑った。が、彼女に相反するかのように、ジェレミアは眉間にしわを寄せて、言葉を続ける。
「ただ、気がかりなことが……」
「なに?」
 彼の不安げな言葉に、朗らかなマリアンヌの表情にも不安が影を落とす。
「あ奴の、為人が……枢木スザクは、イレヴンの間で『最後のサムライ』と呼ばれる枢木ゲンブの嫡子でした。」
 ジェレミアあの口から出た名前に、マリアンヌは思案気な顔をする。
「───エリア11になる前…日本の首相だった男ね。敗戦は免れられないと悟って、自決したとか……」
 その言葉に頷き、ジェレミアは話を続けた。
「徹底抗戦を唱えていた軍部も、総責任者である首相が自決した事で、降伏に転じたと聞き及んでいます。故国を征服し、父親を自殺に追い込んだ国の騎士を望むというのは……」
「彼の忠誠心が、心配?」
「はい。」
 困惑を隠す様子もなく頷く騎士に、皇妃は嘆息する。 そして、手の中のカップをテーブルに置き、椅子の背もたれに背中を預けた。
「そうね……彼は剥き身の剣だわ。初めて見た時そう感じた。
下手に触ると大怪我する。でも、その刃は思わず触れてしまいたくなるほど美しい……
そして、彼自身どこに収まるべきかを知らない。気づかぬまま自分を傷つけている……そんな気がするの。」
 皇妃の言葉に、ジェレミアは顔を強張らせる。
「だから、手元に置いたのよ。そのままにしておいたら、あの子は自分も他人も傷つけてしまう。自覚のないままの彼に、私たちは大きな力を与えてしまったから。」
「……ランスロットですか。」
「彼には、収まるべき鞘が必要よ。
その鞘に、私がなれるものなのか……」
 そこまで言うと、マリアンヌは姿勢を正し、騎士にいつもと変わらぬ笑みを向けた。
「連れて来ているんでしょ?
会いましょうか。その『逸材』君に。」







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