「証明写真?」
「最後に撮りに行けよ」


せいぜい女らしく着飾ってきな、聞いているのかいないのか、百にも届きそうな枚数束になった書類を受け取って、信じられないという顔でこちらを見上げた。

「ここ入るんだろ、そんぐれぇ覚えるのは当然だからな」
「隊規ってこんなにあるんですか・・」
「3日やるから、全部目ェ通しとけよ」

 
返事はなくて紙捲って見開いた眼球が血走ってて、ああ苦手なんだ、思ったけど甘やかすつもりなんて一切ないから無視して、署名一つでも抜けてたら白紙だから、言った時の真白な顔色が思い出すと笑える。





「トシ!トシ!」
「あ?なんだよ近藤さん」
「お前あいつの写真見たか?」


ぷくく、こみ上げるものを必死に堪えながら厚めの茶封筒をちらつかせた。
そういえばそろそろ出来る頃合か、三日前の応酬を思い出して受け取った封筒を開いた。


「・・何で半目なんだよ」
「あいつ寝ないで行ったらしい」


これ何の証明だよ、思ったけど、隣で耐えられなくなって爆発してる笑い声を助長する気がして口に出すのはやめた。

よれた紙束捲る度に、だから撮り直し効かないって言ったじゃん、思い出してはふやけそうになる口元は喫んで結んで誤魔化した。

やり遂げて満足そうに、涎垂らして廊下に転がってる小娘に聞こえないように、お疲れさん、声だけ掛けて、最初の難題クリアして最後の方はガタガタの文字で書かれた名前に、根性だけは認めてやっても良いかなと思った。




馬鹿の証明

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(140815)



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