~ 遡(ソ) ~ どこで流れが変わるのだろうか。 そう考えて、この道は何度通ってきたのだろうかと―――、 初めて降り立った雪の積もる宇治川へと降り立つ。 あの、雪深い地とは違った、怨霊の気配が強く漂う川岸にまだ幼い姿の白龍を見つけた。 初めて時空跳躍をして戻った熊野で、先生に教わった事。 自分が出来る、一番初めへと戻って何度も何度もやり直すこと。 みんなの事を知るほどに、自分がこの地へと降り立つよりも前に戻れないのかと・・・ 悔しくて仕方が無いことも多くある。 将臣君は、私よりも三年以上も前にこちらへ来ていた。 私もその時へと旅立つ事は出来ないの―――? 白龍の逆鱗の力を私は使いこなせていないだけなのだろうか・・・。 溜め息混じりに街の中を彷徨っていたら、賑わう通りへと何時の間にか出ていた。 賑わう・・・といっても、簡易的に市が開かれている場所であった。 フッと花びらが自分の目の前を横切った。 見上げたが、其処には朽ちた木が佇むばかり。 日々、目まぐるしく奔走していたから幻想を見たのかもしれない―――。 またも溜め息を吐くと胸元がほんのりと輝くのが見えた。 ハッとし、取り出した逆鱗は淡く輝きを放っている。 先程の花びらは逆鱗が見せた幻か? それとも伝えたい何かがこの地に私を留まらせたいのか。 そう言えば誰かが云っていなかったか? 此処はかつて、栄華を誇っていた平家の屋敷があったのだと――――。 もしかすると、ここにかつて将臣君が居たのかもしれない。 かつて―――あの人も、此処に居たのかもしれない。 そう考えるうちに、鼓動が早くなり血が逆流するような眩暈にも似た衝動が起こる。 逆鱗は私に何を語りかけているのだろう。 時空跳躍は、自分が『この地』へと降り立つ前に何て今まで連れて行ってはくれなかった。 私の想いがあの人のところへと導いてくれようとしているの? それとも、あの人が私の事を導いてくれようとしているの―――? 思いあぐねる内にも、胸の内の光は輝きを増す。 迷うよりも、 遡ること。 逆らうこと。 そうだ。自分にしか出来ない事を、躊躇ってどうするのだろうか。 意を決して、初めての過去へと私は時空を跳躍したのだった。 ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 望美さん。 初めての重衡さんとの出会いへの跳躍話。 的な。 遡(ソ) ― さかのぼる。 もとの方向へもどる。 水流にさからって上の方へゆく。
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