ローズダストガーデン




このはきだめの街エリダナに俺の幸せはある。

唯一無二の相棒と、相変わらず火の車な事務所と。
そう、火の車だ。なんせ純利益はほぼゼロだ。以前まではマイナスだったからこれでもなんだかましな気がするけど。
相変わらず糞みたいな依頼も多い。割と平和な方の糞依頼は探偵のまねごとの様な浮気調査とか、犬猫探しとか。
物騒な方の糞仕事は裏切り者を追えとか、暗殺とか。
でも危ない橋を渡る仕事はやや減ってきている。ような気がする。まあ後ろ暗くないだけで純粋に命が危ない仕事はむしろ増えたのだけど。

このところラルゴンキンとの合同依頼が増えてきたのと、エリダナにおける一般認知度が上がったおかげで依頼料が適正価格に近付いてきているし、だいぶ顔が売れた。
高いし顔が知られているしで段々後ろ暗いやつらにとっては使いづらい駒になってきたんだろう。
俺たちとしてもわざわざ危ない橋を渡りたくはないので、昔うっかり借りを作ることになってしまった相手以外からの面倒な依頼は受けないようになってきたし、その借りも着々と精算中だ。

あの怒涛のように事件が続いた暗黒時代から10年ほどが経ち、いろいろとすったもんだありいろんな人を巻き込みながら揉めに揉めたギギナとの関係は穏やかに落ち着いた。

たまにオレンジのアルリアン小僧にばかっぷるだのと呼ばれたり、再びまみえた枢機卿には（できれば二度と会いたくなかった）にやにやされたり、妙な依頼が増えたりしたがなんかもうそれはそれでいいかと思えるようになりつつある。

無駄な浪費をしないでくれと頼めば聞いてくれるようになったし、無機物の家族を増やさないでくれという要求も10回に6回ぐらいは通るようになってきた。
これからもまあ、陰謀に巻き込まれたり竜や禍つ式を命がけで討伐したりしながらこんな感じですごしていくんだろう。このエリダナで。ギギナと二人で。



ごく平凡な幸せからは程遠いと思うのだけれど。
とりあえずのところ、このはきだめに彩られた薔薇色の世界で俺たちは生きている。






「約30の嘘」さまのお題「グッバイブルーバード」より『ローズダストガーデン』