その次に唇。
首にも落とす。
「ちょ、豪炎寺、待て」
「嫌だ」
鬼道の制止なんか聞かず、もう一度唇にキスをする。
それから指一本一本にもキスをする。
もう、鬼道の全身にキスをしたい。
鬼道のことが好きで好きで好きで。
とにかく好きだという気持が抑えられそうにない。
「もう、豪炎寺……」
「なんだ」
「恥ずかしいから、もう……」
「いいだろ、別に。今俺しかいないのだから好きなだけ恥ずかしがれ」
もう一度ちゅっと鬼道の頬にキスをする。
真っ赤な鬼道のことなんて気にせず、キスを繰り返す。
流石にもう諦めたのか、抵抗はしなくなっていた。
「……ん……ふっ……」
「……き、どう……」
ちゅっちゅっとキスを交わす音がやけに耳につく。
この感じは嫌じゃない。
羞恥を助長させるような音が逆に心地いい。
それに鬼道の唇も。
ものすごい柔らかいわけではないが、硬いわけでもないこの唇が俺はたまらなく好きだ。
鬼道の頬も好きだ。鬼道の指も好きだ。
鬼道のすべてが、好きで好きでたまらない。
その思いをこめてぎゅうっと抱きしめる。
「鬼道、好きだ」
「豪炎寺……」
「お前は？」
「……言わなくても、わかるだろう……」
「鬼道の口から聞きたい」
鬼道が好きだと言えるように、ちゅうっと唇にキスを落とす。
それでも鬼道はただ何も言いそうにない。
仕方がない、鬼道が言うまでひたすらキスを繰り返すことにする。
ちゅっ、ちゅっ。
第一、こんなにキスをさせてもらえるのだから鬼道が俺のことを好きだなんてわかっているというのに。
それでも、俺は鬼道からの言葉を聞きたい。
ちゃんと鬼道から俺が好きだという言葉を聞きたい。
「おま、え、こんなに、キス、されてたら、なに、も、いえない、だろっ……！」
「じゃあ言ってくれるのか？」
「………………」
「言わないんじゃないか」
ちゅうっともう一度キスを落とすと観念したように鬼道がわかったと言った。
その鬼道の言葉を信じ、じっと鬼道を見つめて待つが、なかなか言いそうにもない。
仕方なくもう一度キスをしようと顔を近づけると「わかった、わかったから」と焦ったように言われた。
「………………」
「お前は……」
「言わないのか？」
「言う、から」
「早く」
急かすと、無表情を装っているが内心ものすごく焦っているのが伝わってくる。
本当鬼道は可愛いなと思う。
これでばれていないと思っているなんて。
鬼道をずっと見ている俺からしてみればバレバレだと思う。
もっとも、そんな様子も可愛いからいいのだけれど。
そんな様子を見ていたら、ようやく決心したように鬼道がきっと俺のことを見つめてきた。
「……す……好き、だ……」
顔を真っ赤にして、心底恥ずかしそうにそういう鬼道は反則だと思ってしまうくらいに可愛かった。
というか、反則だ。なんて可愛いんだ。
我慢できず、ぎゅうっと鬼道を抱きしめる。
「ごう、えんじ……」
「鬼道、好きだ」
ちゅうっと頬にキスを落とす。何度も何度も。
好きだと思いをこめて。
どうすればいいのだろう、どうしたらいいんだろう。
どうしたらこのあふれんばかりの気持ちが余すことなく伝わるのだろう。
鬼道が好きで、好きで、好きで、好きで、好きで、好きで仕方がない。
「あぁ、もう。お前はいつからそんなに恥ずかしい奴になったんだ……」
「さぁな。お前を好きになった時からじゃないのか？」
ちゅうっとわざとらしく音を立ててもう一度キス。
恥ずかしい、上等だ。
どんなに恥ずかしくたって。
どんなに俺らしくないと言われたって。
鬼道のことが好きだからこんな風になるのだから。
だから慣れてくれ。
こんなことをする俺に。
今度はそんな思いも込めて、もう一度キスをした。
らぶらぶちゅっちゅ！
恥ずかしさもこのキスで忘れさせてやるから。